ワークピア磐田でFox Works Produce「姫が愛したダニ小僧」を観た

カテゴリー │演劇

9月10日(日)17時30分~

ダニ小僧とは何か?ということを考えることにそんなに意味はない。
ダニって、あのちっぽけな害虫か?今ならマダニが話題となっているし・・・。
そんなダニのような男の話なのだろうか。
観る前はタイトルのみを見て、勝手に想像を飛ばした。

ダニ小僧とは、劇中で使われるアイルランド民謡「ダニーボーイ」から来ている。
「ダニーボーイ」をダニ小僧に直訳した。
世界中の多くの人も好きであろうが、
作者である後藤ひろひとさんが好きな曲なのだろう。
この曲が醸し出す
懐かしい、愛しい、そんな思いを芝居にしようと思ったのだろう。

「ダニーボーイ」をダニ小僧に直訳する乱暴さが、
この芝居のストーリーの展開の特長である。
介護施設に入っているおばあさんはおそらく認知症であろう。
認知症の症状である妄想が、
自らをすみれ姫と名乗らせ、
世話をする介護職員は、姫の欲求をじゃまする敵となる。
理事長までもが立ちはだかる。

認知症という通常では悲劇的とされる要素を活用する
ある種の不謹慎さは、
その目的のロマンティックさにより許される。

つまり、昔恋した男にもう一度会うこと。
彼女の「ダニーボーイ」の思い出は、認知症の症状ともあいまって、
ダニ小僧と直訳させる。
その乱暴さに後押しされて、
乱暴な設定の登場人物たちが
恋した男に会いに行く旅のお供となっていく。

乱暴ついでに
目的に達する過程も
相当乱暴である。

ダニ小僧の行方を知るという島じじいには、
抜擢された観客のひとりが祭り上げられるという始末だ。

最終的には
願いをひとつだけ叶えるという自動販売機が登場し、
姫の目的を解決してしまう。

冒頭より、ある男が、自殺願望の男に寄り添い、
結果自殺を阻止する話が並行して語られているが、
こちらと突然結びつく。
そしてエンディングに向かう。

話の流れと関係なくいきなり歌いだすのも演劇の特長だが、
カーテンコールでは、
ロック調にアレンジされた日本語の歌詞が入った
「ダニーボーイ」が出演者たちにより歌われる。

乱暴といえば乱暴だが、
この芝居はやはり「ダニーボーイ」だったのだなと
一方安心する。

今回の公演は、浜松で活動する劇団が、
磐田の会場で、
西は愛知の蒲郡、東は藤枝の役者たちを集めて行われた。
当然ながら、演劇は稽古に通えるメンバーたちにより作られる。

そう言えば、近頃東京では
2回目の通し稽古に参加するしないで、行き違いがあったようだ。

どうだろう。
会社の会議や学校の講義なども
遠隔地同士を結ぶネットでも可能な時代、
WEB稽古は成り立つのだろうか。

それでも、今のところ
演劇を作る際、稽古に通える仲間たち、
というのは成り立たせる条件であろう。

いささか乱暴にも思える座組には
乱暴を特長とする脚本が合っていたのかもしれない。

この公演のきっかけとしては
当日配られたリーフレットにも記述されているように演出者の
この作品への思いが反映されていたと思う。

既成の脚本を上演する場合、
やり方は、乱暴に二つに分けると、
忠実にやるのと、壊してやるのとのどちらかである。

後藤ひろひとさんは、
「ダニーボーイ」を壊して芝居にしたと言える。(曲ではあるが)
但し、元々壊れたところが持ち味の脚本を
それ以上壊すのは難しいことかもしれない。
また、愛しすぎると壊せないというのもある。

ビートルズのコピーバンドの多くは
ビートルズの曲を換骨奪胎させようとはあまり考えてはいないだろう。
(換骨奪胎とは、ネットで意味を引くと、
先人の着想・形式を使って、新味を加えて独自の作品にすること)

当然ながら、本当は既成の脚本を上演するやり方を
忠実にやるのと、壊してやるのとのどちらか一方に
なんて分けることはできない。

どちらも混じり合って作るのだろう。
世界中で過去の作品は様々な座組により
繰り返し演じられている。
ハムレットしかり。三人姉妹しかり。

ワークピア磐田でFox Works Produce「姫が愛したダニ小僧」を観た


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