静岡芸術劇場で「シミュレイクラム/私の幻影」を観た

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5月3日(祝)12時30分~

フラメンコダンサーの小島章司さんと
アルゼンチン出身のコンテンポラリーダンサー、ダニエル・プロイエットの、
それぞれの人生の軌跡を題材にしたダンス公演。

小島さんは大学で声楽を学んだ後、
ニューヨークでミュージカルダンスを学ぶか
スペインでフラメンコを学ぶかの選択の中で、
アンサンブルよりソロということで
フラメンコを選び、シベリア鉄道でスペインに向かう。
そこで、日本人でありながらフラメンコダンサーとして、
名を成す。

一方、ダニエルさんは、コンテンポラリーダンサーとして活躍しながら、
日本での公演を機に、女形の歌舞伎踊りを学ぶ。
あでやかな着物を着、頭を結い、白塗り化粧で歌舞伎踊りを踊る。

どこかで、それぞれの出自を交換している。
また、小島さんは78歳とダニエルさんの倍以上の年齢差。
今回の公演はそのような異なるものたちを掛け合わせる
のが目的なのか。

小島さんはスカートをはき、長い髪を肩まで垂らして踊る。
フラメンコというと、
スペインの南部アンダルシア地方を起源とし、
踊りと歌と音楽が混然となった
ジプシーたちの"情熱"をイメージする。

ところが小島さんは御年78歳の年齢もあってか、
踊りは、どこか力の抜けた無駄のない、
例えるなら、たおやかな女性が踊っているように思えた。

しかし、足はフラメンコのリズムに従い、
素早く、的確なステップを刻み続ける。
ここで思い出す。
アフタートークで語られていた
声楽から踊りへの転換期、
ニューヨークを目指さずに、
スペインを目指したというエピソード。
「ウエストサイド物語」のジョージ・チャキリスのように
アスファルトを高く跳ぶよりも
赤土をひたすら蹴り続けることを
選んだのだろうか。

ダニエルさんが、
歌舞伎踊りを踊り始めたのは
まだ3年ほどまえのこと。
上半身裸でコンテンポラリーダンスを披露する場面を見ると、
やはりこちらが本領であると思う。

それぞれの人生の軌跡を題材にしているが、
中心となるのは小島さんが、
徳島の港町で生まれ、
今に至る年齢分の軌跡である。

生まれ故郷にずっと居続ける人と
他の地へ出て行く人がいる。
両親と共に住み続ける人もいれば、
別れていく人もいる。

小島さんにとって、
入り口から離れていく過程は
必要なことであったし、
何より選んできたことだし、
今も踊り続ける理由でもある。

入り口を象徴するものとして、
ご自身の母親の存在があり、
その象徴をアルゼンチン人のダニエルさんが、
準備をたっぷりした出で立ちで
(この時間、観客は第2部の開演を待つ休憩時間)で
あでやかに舞い踊る。

そうして、異なるものたちが邂逅していき、
幕を閉じる。
演出はノルウェイ国立バレエ団レジデントアーティストの
アラン・ルシアン・オイエンさん。
ここでも異なるものとの邂逅がある。

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