短編戯曲「コンビニな女」

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コンビニな女


登場人物

晴恵
後藤田
老人
タカシ
タカコ


   

   
   
   コンビニの店内。
   レジの前に立つ女。

晴恵「いらっしゃいませ」

   男が入って来て、銃を取り出す。

後藤田「手を上げろ。強盗だ」
晴恵「後藤田君」
後藤田「後藤田じゃない。強盗だ」
晴恵「後藤田君じゃない。晴恵」
後藤田「晴恵!?」
晴恵「久しぶり」
後藤田「て、手を上げろ。金を出せ」
晴恵「どうしたの?後藤田君、そんな人じゃないのに」
後藤田「金だ。レジ開けろ。有り金全部出せ」
晴恵「・・・」
後藤田「ここはコンビニエンスストア。便利な店。金がない俺にも便利なはずだ」
晴恵「変わったわね。後藤田君」
後藤田「変わるさ。十年もたてば」
晴恵「付き合ってた頃はそんなんじゃなかった」
後藤田「晴恵・・・」
晴恵「便利だなんて、言葉を使うことなんてなかった」
後藤田「やめろ」

   後藤田、晴恵の目の前に銃をつきつける。

後藤田「防犯カメラはどこだ。ぶっこわしてやる」
晴恵「消してあるの。省エネで」
後藤田「省エネ?」
晴恵「表の照明も暗かったでしょ?コンビニには珍しく。これも省エネ」

   老人が壁を伝い伝い、よろよろとやってくる。

晴恵「おじいちゃん、今日は帰って」
後藤田「ダメだ。この場を見られたからには」

   後藤田、老人を捕まえようとする。

晴恵「大丈夫。このおじいちゃん、目が見えないの」
後藤田「口がきけるだろう。外できっとこのことを喋るだろう」
晴恵「口もきけないの。おじいちゃん」
後藤田「身振り手振りでどうにか伝えるだろう」
晴恵「そんな動きどうやって出来るの?」

   老人、よろよろと近付いてくる。

晴恵「後藤田君、ちょっとタイム」
後藤田「タイム?」
晴恵「お客様よ。仕事をさせて」
後藤田「そんな暇はない」
晴恵「これはわたしの仕事」

   老人、よろよろとカードを取り出す。

晴恵「ATMね。待っててね」

   晴恵、カードを受け取ると、ATMコーナーへ行き操作。

後藤田「暗証番号まで知ってるのか。大した信用のされ方だな」
晴恵「おじいちゃん、ごめんね。残高ゼロ。この店で買える物はないわ」

   晴恵、売場へ行く。

晴恵「おじいちゃん、お寿司好きだったよね。明日用にパンやおにぎりも。それから・・・」

   晴恵、売り物の食べ物を抱えて持ってきて、老人に渡す。

晴恵「じゃ、これで。バイバイ。またね」

   晴恵、老人を帰らせる。

後藤田「何してんだ。売りもんだろ?」
晴恵「大丈夫。ちょうど本部が決めた廃棄処分の時間」
後藤田「捨てるものやったのか」
晴恵「あくまで本部が決めた時間。食べても問題ない」

   タカシとタカコがやってくる。
   共に手には、ふたを開けたカップめん。

タカシ「お湯ちょうだい」
タカコ「タカシ、私、トイレ」
タカシ「先にお湯だ」
タカコ「我慢できない」
タカシ「しょうがねえなあ、タカコ、先トイレ行って来い。お湯入れといてやる」
タカコ「サンキュ、タカシ」
タカシ「すごいな、英語かよ」
タカコ「サンキュ」

   タカコのカップめんを受け取り、タカコはトイレに向かう。

タカシ「お湯」
晴恵「そこにポットあるから」

   タカシ、カップめん二つにそれぞれお湯を入れる。

タカシ「ゴミ」

   タカシ、スープか何かで出たゴミを手にしている。

晴恵「外にゴミ箱あるから」
タカシ「出来上がりまで三分」
晴恵「あそこ。時計」
タカシ「やっぱコンビニいいなあ。クーラーきいてて」
晴恵「アパートは?」
タカシ「電気停められた。水道もガスも停められた。電話も停められた。だからずっとタカコといる。離れられないんだ」

   タカコが戻って来る。

タカシ「な、タカコ」
タカコ「ん?何?タカシ」
タカシ「いや、何でもない」
タカコ「言ってよ。二人に秘密はなしだよ」
タカシ「ああ、わかってる」
タカコ「ねえ」

   タカコ、晴恵に向け言う。

タカコ「お箸ある?」

   後藤田が銃をつきつける。

後藤田「手で食え!!」
タカコ「キャ!誰?この人怖い!」
晴恵「昔は優しかった」
タカコ「お姉さん知ってる人?」
晴恵「昔、付き合ってた人。あなたたちみたいに」
タカコ「それが今これ?」
後藤田「ふざけんな!おまえら、ちったあ、金あるだろ。出せ!」

   後藤田、タカシとタカコに銃口を向ける。

晴恵「あるわけないでしょ。今どきの若者に」

   晴恵、二人の楯になり、銃口の前に立つ。

後藤田「(思わず)あ、危ないだろ、晴恵」
晴恵「あ、やっぱ、やさしい」
後藤田「う、うるさい。撃つぞ。この野郎」

   後藤田、あらためて銃を構える。

晴恵「二人はお店の大事なお客様。私が守らなくて誰が守るのよ」
タカシ「コンビニのお姉さん・・・」
タカコ「カッコイイ・・・」

   タカシとタカエは晴恵の正義感に感動している。
   後藤田、ひとり高笑いをしている。

後藤田「金がないのに、お客様か。日本の資本主義もおかしなことになったもんだな」
晴恵「大事なお客様よ」
後藤田「さっきのじいさん、このバカップル・・・これじゃ売上も上がらんだろう」
晴恵「売上がすべてじゃない・・・」
後藤田「店に入った時、晴恵だと気がつかなかった・・・」
晴恵「・・・」
後藤田「顔色悪いぞ。寝てるのか?」
晴恵「ほっといてよ」
後藤田「ずいぶんやせたな。飯食ってるのか?」
晴恵「い、いいじゃない」
後藤田「コンビニ業界も競争厳しいんだろ?二十四時間営業だし。年中無休だし」
晴恵「さあ、働くぞ~。忙し忙し」
後藤田「コンビニのオーナーも大変だな」
晴恵「私はオーナーじゃない。単なるアルバイトよ」
後藤田「アルバイト?」
タカコ「そういえば、この店いつ来てもお姉さんだ」
タカシ「いつ休んでんの?」
後藤田「ずっと働いてるのか?オーナーはどうしたんだ」

   晴恵、倒れる。
   タカシ、タカコ、晴恵の所へ。

タカシ「救急車」

   タカシ、外へ走ろうとする。
   後藤田、タカシに銃を向ける。

タカコ「タカシ!」
後藤田「待て。外へ連絡するのは」
タカシ「だって倒れてる」
後藤田「俺がまずいだろ」
タカシ「ああ・・・」

   晴恵、立ち上がる。

タカコ「お姉さん!」
タカシ「大丈夫ですか?」
晴恵「大丈夫。みんな、仕事のじゃま。用がすんだら帰って」

   晴恵、働きだす。

晴恵「カップめん食べたら、さあ」
タカシ「もうのびてるよ」
晴恵「(後藤田君に)さあ」
後藤田「俺はまだ用が済んでない」
晴恵「そうだったね。後藤田君、強盗だったね」
タカコ「ゴウトウダ君?」
晴恵「ゴ・ト・ウ・ダ。後ろと言う字に藤田(ふじた)で後藤田」
タカコ「ああ。後藤田さん」
タカシ「後藤田さん」
タカコ・タカシ「よろしくお願いします」
後藤田「あいさつなんかいい。晴恵、金を出せ」
晴恵「ないって」
後藤田「あるだろ。レジ開けろ」
晴恵「売上ないから」
後藤田「売上なくても、釣り銭くらい」

   後藤田、レジを開ける。
   金はない。後藤田は探す。

晴恵「だからないって」
後藤田「俺は何ていう店に強盗に入ったんだ」
晴恵「あきらめ付いたでしょ?ね」
後藤田「オーナーはどこだ」
晴恵「お客様、お帰り下さい」
後藤田「オーナーに話がある」
晴恵「ここにはいない」
後藤田「倒れるまでアルバイトに働かせるなんて」
晴恵「入院中。オーナーも倒れたのよ」
後藤田「本部は何をしてるんだ」
晴恵「本部も競争が厳しいのよ」
後藤田「おまえが、やりたかったことは、これか?」
晴恵「お帰り下さい」
後藤田「俺と別れる時、何て言った?『あなたのためにだけ生きるのはやめた。みんなのために生きたい』」
晴恵「みんなのために生きてるのよ」
後藤田「俺はおかげで、お前と別れてから、ひとりぼっちだ」
晴恵「相変わらず、不便な男」
後藤田「便利な女だけじゃないか。コンビニに勤めるコンビニな女」
晴恵「そう。私は、コンビニな女」

   晴恵、コンビニの女のポーズをとる。

タカコ「私、これから、この店でトイレだけ借りることなんかしない」
タカシ「俺もカップめんのお湯だけもらうなんてことしない。カップめんもここで買う。な、タカコ」
タカコ「お金が必要」
タカシ「稼ぐさ」
タカコ「カップめんだけじゃない。何でもお姉さんのお店で買うよ」
晴恵「私の店じゃないけど」
タカコ「食べるものも」

   タカコ、食べ物コーナーを指し示す。

タカコ「着るものも・・・」

   タカコ、着る物コーナーを指し示そうとするが、あまりない。

タカコ「パンスト・・・」
晴恵「わかった、オーナーに言って、着る物揃えてもらうよ。あなたガーリー似合うよ。あなたのためにガーリー揃える。家具もないね。オーナ  ーに言う。犬好き?」
タカコ「大好き」
晴恵「揃える」
タカコ「わ~。便利~」
晴恵「ほかに何が必要?ねえ」
タカコ「結婚式もここであげる。ね、タカシ」
タカシ「え?結婚?あ、ああ。カップめんだけじゃない。何でもここで買う。ここでタカコと結婚式あげる」
晴恵「わかった。まかせて。司会進行は私がやるよ」
タカコ「後藤田さんも出席して下さい」
タカシ「お願いします。後藤田さん」
後藤田「ああ。わかった。出席する」
晴恵「後藤田君」

   パトカーのサイレンの音が聞こえる。

タカシ「パトカーだ」
晴恵「あ、おじいちゃん。呼んじゃった」
                         


                おわり 

※写真はイメージです





 

路上演劇祭JAPAN in 浜松のための「街歩き」

カテゴリー │路上演劇祭

24日(土)15時に遠鉄百貨店前に集まり、
路上演劇祭の場所を決めるための「街歩き」。
集合場所は、第一候補の場所である。

続いて、駅から南へ徒歩5分のスーパー「ビオあつみ」の駐車場。
近くは造成で、空き地が多い。
元の風景が変わり、新たな建物も建てられている。
ただし、まだ空き地が多く、新たな街ができてくるのは
これからだろう。

次に再び遠鉄百貨店前に戻る。
新浜松駅の南側、謎のイベントスペースがあるが、
(イベントをやるべく、設計したと思うが、実際にはイベントで使われている気配はない)
いるとしたら、鳩か、スケボーをやる人)

最後に、プレスタワーの玄関前のスペース。
ここはやらまいかフェスティバルで、演奏場所のひとつとして
使われていた。

そこで予定の1時間が過ぎ、16時~。
予定通り、浜松駅内のフレッシュネスバーガーで、
実行委員会も兼ね、場所の検討。
あらためて遠鉄百貨店前を第一候補として進める。

参加者及び実行委員の募集も同時進行中。
エントリー締め切りは2月末日。
参加者は、一緒に実行員としても活動することになる。
僕もエントリー予定中!!
「はままつ」をテーマにした演劇を考えている。
一緒に街歩きかなんかして、
「問題」を探し、共に作れればと考えている。
こちらも参加者募集中!!


路上演劇祭JAPAN in 浜松

日程:5月23日(土)14時~19時
場所:浜松街中(追って正式決定)


写真は募集チラシ。









 

高校1年の時の年賀状

カテゴリー │段ボール箱より

今日、コメントで自作している年賀状について書き、思いついて、押入れから引っ張り出して来た。
高校1年の時に出した年賀状のデザインである。
当然ながら、年賀状は出してしまうと、相手側に渡るわけだから、
自分が出した年賀状がどんなものだったか、時と共に忘れてしまう。
だから、1枚は自分のためにとっておこうと思いついて、ずいぶん経つ。
今まで見返すことはほとんどなかった。
でも、本日、見返してみた。

ラブレターも同様、現物は相手側にあるので、複写をとらない限りは
自分が出したのがどんなものだったか、時と共に忘れてしまう。
(今なら、PCのワードとかで書けば、データを残してるかも)

とは言え、年賀状もラブレターも相手が今も保存しているかどうかは
知る由もない。
(ラブレターを相手が保存しているかどうか、想像するのは
考えること自体、自分でもちょっと気持ち悪い)

高校1年の時の自作年賀状。
木版画で刷った。
お馴染みの3人らしい。





 

「ファイナルイベント」ではままつ演劇・人形劇フェスティバル2014の幕が閉じた

カテゴリー │演劇

18日(日)16時~
クリエート浜松ふれあい広場で、行われた。
主な内容は、劇作ワークショップ→演技ワークショップを経て、有志メンバーにより作品化された3作品の発表及び、
各賞の発表、懇親会

僕は静岡県西部演劇連絡会として、高校演劇選抜公演の表彰プレゼンテーターを担当した。


①作品発表

寝癖QUEST  作:渥美彩音
コンビニな女   作:寺田景一
正直さん     作:松本秀一


②各賞発表

◎高校演劇選抜公演表彰

ポップでリアルな会話賞  静岡県立浜北西高等学校「ロックは無用☆」
ピュアで素直な演技賞    静岡県立浜松工業高等学校「愛こそすべてだ」
コンビネーション抜群賞  浜松開誠館高等学校「クッキング部の鈴木」
世界観を創り上げる個性的な演技賞 静岡県立浜松湖東高等学校「冬のキリギリスたちへ」
レベルの高いアンサンブル賞  浜松市立高等学校     「問題の無い私たち」
女優賞                 土屋薫子(静岡県立浜松北高等学校)「ねずみ役」
静岡県西部演劇連絡会賞  静岡県立浜松北高等学校「裏町のピーターパン」


◎浜松写真連絡協議会賞    人形劇部門

◎MIP賞(観客賞)      古木大介(劇団からっかぜ)

◎劇評賞    該当者なし

◎演劇部門自主公演表彰

主演女優賞   櫻井ちさと(雪解カンガルー)
主演男優賞   該当者なし
やらまいか賞  雪解カンガルー
最優秀賞  座☆がくらく    「わが星」
        劇団からっかぜ  「ドリームエクスプレスAT」 

そして、はままつ演劇・人形劇フェスティバル2015に続く!!





 

鴨江アートセンターで「新年あけましてひとりしばい」を観た

カテゴリー │演劇

今年はじめての演劇を観た。
時節柄、タイトルは、「新年あけまして」から始まる。
そして、ひとり芝居の競演。
個人的な話だが、
ひさしぶりに会う人が満載の客席となっていた。


1月10日(土)19時~
鴨江アートセンター101室

演目は
竹内香緒里「ココロの旋律」~青井ユメカ詩集「うたうたう」より4編を朗読

見野文昭「アノネの日記」~序章まがいに~(作・演出 近江木の実)

滝波倫邦「さくら」 (作 滝波倫邦)

鈴木千波「花火」  (作 鈴木千波)