穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールで「ゲルニカ」を観た

カテゴリー │演劇

10月24日(土)13時~
栗山民也さんが20年以上前にスペイン・マドリードの美術館で
パブロ・ピカソが描いた絵画「ゲルニカ」を観て以来、
あたためていた題材を劇作家長田育恵さんにより書かれた戯曲を演出。

作品が生まれるにはどこかにスタートがある。
ゲルニカを題材にした演劇は提案されることもあったが立ち消え、
この度渋谷・パルコ劇場の新装建替による
オープニングシリーズでの上演のため、スケールの大きい題材をということで
実現したようだ。

絵画「ゲルニカ」は、
スペイン内戦中の1937年4月26日、ドイツ軍によりスペイン・バスク州ビスカヤ県・ゲルニカに対して行った無差別爆撃を行った
ゲルニカ爆撃を題材に描かれている。
空爆による無差別爆撃はゲルニカ爆撃が世界で初めてといういうことだ。

演劇「ゲルニカ」はゲルニカに生きる人を中心に
2人の戦争のルポライターを交えて描く。
上白石萌香さん演じる元領主の娘サラが結婚式を控えているところから始まる。
上白石さんの発する言葉はとても明晰で、聴きやすいように思えた。
何はともあれきちんと言葉を伝えるのだという意思を感じた。

日本人の役者にとって、
決して近い役ではない。
しかし、無差別爆撃は
年代は遅れるが日本軍によるアメリカ本土空襲、
アメリカ軍による日本本土空襲も同様だ。

戦争の悲劇の重さを比較することはできないが、
大変な悲劇であることに変わりはない。
そして、共通して戦争は繰り返してはならないというメッセージが込められる。
それは構造としては単一だ。
事実が語られる時、
確実に悲劇が訪れる。

なぜ日本人が
バスク語でなく日本語で
ゲルニカ爆撃の話を語るのか。

それは、同じ人間だからである。
そして国籍が違うからこそ
背負わねばならぬ重みを感じながら演劇をつくる。
書く人も演出する人も
演じる人も。

それは硬さをまとっているように見える。
でもそれは当然のことなのだ。

ここで登場人物は皆無名の市民たちである。
歴史の有名人織田信長や演劇の有名人ハムレットを演じているのではない。
身近でない国の
身近でない時代の
身近でない人の
生きた証を演じるのだ。

多くは敬虔なクリスチャン。
月曜日から土曜日まで働き、
礼拝をおこなう安息日の日曜日を迎える。

安息日の翌日は
また月曜日がやってくる。
僕が就職した時、その会社は
週休1日(日曜)で土曜日は半日出勤だった。
のちに土日休みの週休2日になった。

勤務先は変わったが以来
週休2日制の会社に勤めている。
休みを終えるとやはり月曜がやってくる。
月曜がやってこなければ、
と思うこともないではないが、
月曜がやってくることは連関しているということでもあり
幸せな事だろう。

ゲルニカに生きる人たちは
歴史の史実通りにある日の月曜日を迎えることができない。
日曜日、爆撃が行われる。
安息日は永遠の安息日となる。
それはごく小さな世界で仲たがいをしていた人同士も同様である。

一様に爆撃の餌食となる。
悲しき物言えぬ被害者になる。
そういうことを伝える演劇なのだ。
生き残ったルポライターたちは、
役割通り、生存している人たちのために
事実を書き残す。
ただし、
犠牲となった人々の名は記されなかったそうである。

それはその時は意図していなかったと思うが、
後世に伝わる結果となる。
それをおよそ身近でない、
スペインに足を踏み入れたこともない
ゲルニカの絵も、画像や映像でしか観たことがない
僕の身にもかりそめにも身近であるかのように
思わせてくれる。

観客の男女比は女性が圧倒的だった。
ちょっとインタビューしたくなる。
上白石萌香さんやキムラ緑子さんが出演されているから
観に来たのですか?
決してゲルニカ爆撃は身近とも言えないと思うのだが。
また、コロナ禍、重いテーマのものはちょっとと思う人もいそうな気もするのだが。
でも何がきっかけでも
来てしまうのは称えたい。
これは確実にリモートでは味わうことが出来ない。

終幕後、席を後にしながら、
女性たちが「お腹空いた~、なんか食べよう」
なんて言っているのを聞くと、
ああこれからこの周辺の飲食店に繰り出すんだなあと想像する。
これは劇場の存在の仕方としてはとても好ましい。
経済もリンクしている。

そのような視点で考えると
駅のすぐ横にあるPLAT周辺は
繰り出すにはちょうどいい街のつくりをしていると思う。
駅のそばにある大きな本屋に用があり歩いたら
あらためて感じた。

穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホールで「ゲルニカ」を観た


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