シネマe~raで「キャタピラー」を観た

テトラ

2010年08月16日 07:06

15日17時45分~
上映後、監督の若松孝二・主演男優の大西信満両氏のあいさつ。
主演女優の寺島しのぶがベルリン国際映画祭の銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞。
第2次世界大戦に出征し、四肢を失った状態で戻ってきた夫(大西)と彼をむかえる妻(寺島)の物語。
戦争の真っただ中であるが、舞台となる場所に爆撃はなく、学生が疎開してくるような田園地帯である。
戦争中であることは確かである。10代の若者に赤紙がおとずれる。農業地帯でも食料不足の波は来る。女たちは竹やり部隊やバケツリレーの練習に励む。
しかしながらフィルムに現われるのは限りなく美しい日本の田園であり、農作業にみんなそろっていそしむ姿である。
若者が出兵する時は村人総出で見送り、戻ってきた時も総出で迎える。
四肢を失って戻ってきた男を軍神とたてまつり、妻を心から励まし、米や野菜、卵などを差し入れる。
僕は思う。
お国のため、と戦争に勝つため一丸とさせられているのであるが、それらはどこかあたたかい。
ただ、その風景の中には唯一明らかな戦争の悲惨な実害を受け、失った両手、両足、頭の右側は焼けただれ、聴くことももしゃべることも失わされた男がいる。
そして、彼の面倒を一生みなければならない妻がいる。
この対比の不条理さが戦争である。
映画はこのふたりの毎日をただただ描く。
やがて無条件降伏を受け入れ、終戦。
考えてしまった。
今の日本は確かに戦争はない。
でも果たしてあのあたたかな田園はあるのか。
他人が他人を送り出し、他人が他人を迎え入れる度量はあるのか。
「日本だけのため」と「自分だけのため」とどう違うのか。

会場は満席だった。








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