静岡市民文化会館大ホールで劇団四季ミュージカル「キャッツ」を観た

テトラ

2024年10月06日 08:16

9月16日(月祝)13時~

静岡市民文化会館では、何年間に一度、劇団四季ミュージカルの期間限定公演を行う。
今回のキャッツは7月17日から9月23日の2か月以上の上演。
しかしながら、自治体が関連するホールで、2カ月以上貸し切るのは、そう簡単ではないだろう。
他に使用希望者もあることだろうし。

キャッツの公演は、2013年以来、約10年ぶり、3度目だそうだ。
僕は「キャッツ」は初めてで、「美女と野獣」「オペラ座の怪人」を同じく期間限定公演で観た。
公演数を数えてみたら、一回の貸し切り公演を含み64公演。
静岡市民文化会館の席数は1968人。(そのうち何席上演のために使用しているかはわからない)
料金は4000円~13000円(日や席種により異なる。週末は高くなる。そして高い席種から売れていく。
僕はピーク料金C席5000円)

僕が行ったのは千秋楽の1週間前の公演。
上演日の9日前に購入したのち完売となった。
9月になっても真夏と同じ暑さが残る駿府城公園横の会場へ赴く。
前の広場では地元のテレビ局のイベントをやっていて、露店の前で予想外の暑さに訪れている客も戸惑っているよう。

会場内は、さまざまな年代の人がいた。
お子さん(と言っても3歳以上は料金がかかるので、ある程度理解できるような年代)連れの家族、
あらゆる年代のカップル(老夫婦もいた)、
女性グループ(男性グループというのはあまりいない)、
など。
最もいないのは、僕のような男性ひとりというのかもしれない。
他の演劇ではけっこういるのだが。

キャッツは、ノーベル文学賞詩人、T.S.エリオットの詩集を原作とする。
「キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法」というタイトルの本には、
様々な個性の猫が章ごとに紹介されている。
つまり、ばらばらに生きていて、同じ地平にはいない。
猫愛にあふれている作品。

これをミュージカルでは、
年に一度の夜、都会のごみ捨て場で、猫たちが、最高のジェリクル・キャッツを選ぶ舞踏会が開かれるという設定に変更している。
ばらばらに生きていた猫が同じ時、同じ場所に生きている。

一定の主人公がいて、他の登場人物たちと絡み合いながらひとつの物語を作り上げていくというより、
各登場人物に順番にスポットライトが当たっていき、全体が作り上げられる群像劇となっている。

それも、長く観客に愛されている作品になっている理由だと思う。
それぞれのキャラクターをもっと知りたいという気になるのだ。
台詞と歌で語られるのはその猫の人生のほんの断片。
自己紹介。
本当はその先があるのだ。
それは、限られた上演時間の中では語られない。
そんな、知りたい、知りたい、もっと知りたい、という欲求が、
ふたたび、劇場へ通わせることになるのだと思う。

そして、何より楽曲。
ヒットミュージカルには、キラーチューンが必須で、
「メモリー」を聴きに劇場へ来る人は数多いだろう。

音楽は魔力のようなもので、話の詳細などを吹っ飛ばしてしまうところがある。
今のよくわからなかったけど、まあいいや。
(だって、ジェリクルキャッツ、ジェリクルキャッツってしきりに言うけど、素晴らしいものだろうけど、何なんだって思ってたもんね。初見だと)

それも、また劇場に足を運ばせる理由だと思う。
足を運べば運ぶほど、知らなかったことがわかり、理解が深まっていく。

その猫たちを表現する衣装、メイク、演じる俳優の魅力があり、それぞれのキャラクターが成り立っている。
当然ながら鍛えられた歌とダンス。
劇団四季には、700名以上の俳優が所属しているという。
そして、専用劇場や全国各地で、常に上演を行われている。
小さいころからバレエをやったり、歌を学んでいた人が目指す場となっている。
また経営350人、技術350人のスタッフもいるという。
年間3000ステージ超、観客約300万人(Wikipediaより)

舞台セットを見れば、建て込みを予想するとキャッツという公演は、
専用劇場か、地方なら今回のような2か月以上くらいでないと、上演は出来ないというのがよくわかる。
ゴミ捨て場を表す捨てられたゴミのオブジェは、上演地域にちなんだゴミが登場し、加わっていくということが話題になる。

僕が観ていた2階後ろの方の席の隣では、
ご夫婦らしきおふたりが、開演前に、劇団四季の各上演案内を見ながら、
「今度はアラジン行きたいねえ。映画おもしろかったもんねえ」と話をしていた。
上演終了後のカーテンコールでは、
「うわあ、また出来てきてくれた」と、舞台袖にひっこんでからの何度目かの登場に感謝している。
そして、
「また来たいねえ。次はもっと前で」

そうなのだ。
おそらく、演劇をあまり観ない方をそんな気にさせてしまうのだ。
僕なんかは、何度もカーテンコールで現れるのはよくあることだよ、
とすましているのが恥ずかしい。
1階の客席に俳優たちは降りていき、観客を喜ばせていると、
2階のドアが開き、そこからも猫たちが現れる。
観客は思いもよらぬことに大喜びで、しきりに手を伸ばしタッチ。

最後は、マジカルなキャラクターの猫がひとり(1匹)で現れ、
マジカルに消えて完全終演。

カーテンコールも計算されている。
すごい。
「また来たいなあ。今度はもっと前で。できれば誰かと」



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