クリエート浜松2FホールでMUNA‐POCKET COFFEEHOUSE「熊人」を観た

カテゴリー │演劇

11月12日(日)11時30分~
10時からチラシの折込があり、
手伝ったため、開演まで時間があり、
同じクリエート浜松で行われていた
静岡県高等学校美術・工芸展 西部展を観た。

静岡県西部地区の高校生が描いた絵やポスター、彫刻などが展示されていた。
作品と共に作者のコメントが手書きで添えられている。
最優秀賞、金賞、奨励賞を受賞した作品は、賞の名称が書かれた紙が貼られている。
絵や言葉は、こんなにも内面が現れるものかと思った。
出品作品が多い高校があり、
題材への視点の鋭さはきっと指導者の影響もあるのではないかと推測した。

その後、2Fホールへ。
「熊人」を観る。
人間になりかわった熊が人間社会にいるという。
しかも姿は完全に人間のままで「熊人」が熊であるかはわからない。

熊の胃の中から人の骨が出てきた、というニュースがあった。
昔話の金太郎では金太郎は熊と相撲を取るが、
サーカスで自転車に乗る熊も普段は檻の中である。
11時30分からの1回目の公演は、
小さなお子さん連れOKのパパママ公演。
とは言え、未就学児に見せるということではなく、
未就学児を持つお父さんお母さんも
安心して観劇してほしいという配慮。

話を広げれば、テロや殺人なども日常の見分けのつかないところから
突如現れる。
被害者が出る。
「え?あの人が?!」
世間は騒ぐ。
そしてまた悲劇は繰り返される。

そんな世間の不安を
「限りなく人じゃなく熊」の存在がいる状況を生み出すことで、
演劇を通し具現化する。

MUNA‐POCKET COFFEEHOUSEの公演は毎回決まっていることがある。
先ずオープニングはYMOの「ビハインド ザ マスク」で幕が開く。
まるで、シリーズ物の映画のように。

そして、ダブルキャストの形をとる。
通常は、キャストの都合でダブルキャストの形をとることが多い。
ロングランのミュージカルなどは
単に公演数の多さが理由で、
完全ダブルキャスト性を敷いたりする。
主に営業的な理由が大きいと思う。

対して、こちらのダブルキャストはなぜなのか、
今回、それがわかる演出がされたように思った。

会場に入ると、
真ん中の演技エリアのぐるり360度に椅子が置かれ、
観客席となっている。
いくつかの椅子に「熊人専用」と紙が貼られている。
当然そこに座る観客はいない。

芝居は分かり合えない父と娘の対話の場面から始まる。
人間に化けた熊がいるということが観客に伝えられ、
ほどなくすると、するすると上から幕が降りてくる。
舞台と観客は半分に分断され、
それぞれで役者が出てきて芝居が展開される。

つまり幕の向こう側で行われているもうひとつの芝居は観ることができないのである。
幕一枚という事情から声は洩れ聞こえてくる。
もしかしたらこれも狙いなのかもしれない。

そうなのだ。
半分は見えない演出なのだ。
ダブルキャストの場合、
すべての公演を観れば、
すべてのキャストの演技を観ることができるが、
通常の観客は1本のみなので、
ああ、果たしてあの役者はこの役をどのように演技したのだろうか、
と夢想してみても、実際目の当たりにはできない。
その演技は想像の中だけである。

実は、このことを、
それでよしとしているのではないか。
足りないことをむしろ観客に与えている。

かつて、「桜田家族」という作品が上演された。
桜田家族とはサクラダ ファミリアをもじっていて、
スペイン・バロセロナにある建築家ガウディにより造られた教会をモチーフにしている。
ガウディの死後、現在も作られ続けている「未完」の象徴としてのサクラダ・ファミリアを
モチーフの骨幹にしていたように思う。

未完成。
完成させないのか、
それとも完成できないのか、、、

完成したら終わりなのか、
それとも終わりではないのか、、、

観客の持つ多少のストレスも
観劇の楽しみのひとつとでもいうように
観客を惑わせ続ける。
挑発し続ける。

とても暴力的な設定だと思う。
人と獣の共存である。
ただし、物語に実際の惨劇は訪れない。
用意された対策システムが機能し、
惨劇は未然に防がれ、
物語の主軸は父娘のわかりあえなさに帰結する。

これを普遍のテーマととらえることもできるが、
設定ならではの独自の展開に進むのを阻む気がする。
熊人の持つ危うさとギャグのバランスが気になった。
危うさが張り詰めれば張り詰めるほど
ギャグは悲哀を含み、より効果的になる。
笑いは落差と言われる所以だ。
笑えば笑うほど哀しくなる。

それが実現した時、
果たして、パパママ公演という範疇がふさわしいかどうかは
わからない。
本当に観たいものなら、
未就学児は父母に預けて見に来るだろう。
例えば夫婦が恋人時代だった時、
大好きでともに聴いたアーティストのコンサートとか。

当然ながら、演劇でそれを目指してもいいと思う。
誰がなんて言おうとも。
あえて言えば、面白きゃいいのだ。
怖すぎても。
変すぎても。
ああ、今、これ、自分に向けて言っている。

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