バーテンダーマン

カテゴリー │静岡県西部演劇連絡会会報原稿

■バーテンダーマン                  フィールド  寺田景一

別段、日々、戯曲を書いているというわけではないが、僕が上演を前提の戯曲を書くようになったのにはきっかけがある。
仲間たちと演劇をやろうということで集まったが、何をやるかは決まっていない。
当初は既成の戯曲を読んだりした。
チャンスがあれば提案したかったのだろう。
「路上をめぐるオム二バス演劇~仮題(なだらかに世は明けて)」と題した、路上を舞台にした4本の短編を書き、仲間に読んでもらった。
この4本は通すと1本の芝居としてつながっている。

そして、当時領家町にあったスペースCOAでの「ユニットライブ」での上演に結びつく。
ただし、舞台転換含め1時間を上演時間とする決まりだったため、1本にまとめあげ、「なだらかに世は明けて」と言うタイトルで上演した。
「路上」「オムニバス」のキーワードが、関わっている「路上演劇祭」や、参加する「はままつ演劇オムニバス」とダブるのは偶然であろう。
ここで、提案した4本の内の1本目、「バーテンダーマン」を紹介させてもらう。
本当は、11月8日のオムニバス公演のことを優先して考えるべきであろうが。

バーテンダーマン

   路上に、バーカウンターを腰に装着した男、バーテンダーマン(以下バーテン)が立っている。
   バーカウンターに突っ伏している客、西野。

バーテン「もしもし・・・もしもし・・・もう3月ですよ」
西野「(ムクリと起き上がり)3月?」
バーテン「間違えました。もう3時ですよ」
西野「3月と3時と間違えるか?」
バーテン「あんまり眠っているお姿が熊に似ているので、冬眠中の熊を起こす気分になってしまいましたよ」
西野「何だよそれ。熊起こしたことあるのか?まだ3時か。もう1杯ちょうだい」
バーテン「すみません。看板なんです」
西野「看板?誰が決めたんだ。もう1杯出せって言うの」
バーテン「残念ながら、お酒切らしてしまって」
西野「何だ、そんなんでバーがつとまるのかよ。バーボンとかさ、スコッチとかさ、琥珀色でさそのままクッと飲むとカーッとこのあたり(顔のあたり示す)熱くなる液体ないの?出せよ」
バーテン「この通り、何もないですよ」

    西野、手元のグラスを逆さにするがカラッポ。

西野「(時計を見て)3時か。終電もとっくに出ちゃってるな」

   バーテン片づけ、テーブルを拭く。

西野「何もなくなっちゃったな。ホラ、この時間になると人もほとんどいない。繁華街も名ばかり。これでさ、あんたが店閉めちゃうと、オレここにひとりっきりだよ」
バーテン「仕方ないでしょう。どの店も開店時間があり、閉店時間がある。近頃は24時間営業の店が増えちゃって関係ないところも多いんだけど」
西野「ああ、24時間営業っておかしいよ。1日は24時間だろ。てことは全く休みなしってことだろ」
バーテン「同じ人が24時間働いているわけじゃないでしょう。アルバイトとか雇ったりして、交代で休んでいるんでしょう」
西野「当たり前のこと言ってないで、さっさと酒だせよ」
バーテン「お客さんもそろそろお帰りになったほうがいいんじゃないんですか?」
西野「いいんだよ。俺の帰り心配してくれなくても。今俺は飲みたいんだから・・・ね」
バーテン「・・・はい」
西野「もしさ、あんたの奥さん、いや彼女でもいい。カレーライスをあんたのために作ってくれる。食卓のあんたの前に皿に盛られたお手製のカレーライスが置かれる。でもいつもその上にはソースがかけられている。・・・それって許せる?」
バーテン「わたしはカレーにソースかけますから大丈夫ですけど」
西野「俺もかけるときもあるんだ。でもかけたくない時もある。ソースは皿の横に別に置いといてくれればいいと思わないか?・・・」
バーテン「・・・まあ、そうですね」
西野「いつもかけるあんたは、かければいいさ」
バーテン「ええ、かけますね」
西野「でも自由にさせてもらいたい時もあるだろう」
バーテン「わたしはいいんですが、別の方がよろしいのなら、そのように言えばいいんじゃないですか」
西野「そうだな。言えばいいんだ。でもカレーだけじゃないんだ。ゆで卵にはマヨネーズがつけられている。イチゴには練乳がたっぷり。ウインナーいためればいつもタコさん。チキンライスには旗が立っている。どうしてミソラーメンと言えばサッポロ一番ばかりなんだ・・・」
バーテン「閉めますよ。他の店のネオンも消えてきました。またいらっしゃってください」
西野「また?あしたもここにいるのかい?」
バーテン「・・・さあ」
西野「また来るよ」
バーテン「ここにいるかどうかわかりませんよ」
西野「でもまた来るよ」

   西野、去っていく。                

   おわり


2015年8月2日号 静岡県西部演劇連絡会会報原稿より



 

PLATで「井上加奈子/平田満 表現・発見・体験ワークショップ」に参加した

カテゴリー │演劇

22日(土)13時~17時

井上加奈子さんと平田満さんは、
かつて、つかこうへい事務所で、
つかこうへい作・演出作品によく出演されていた。

残念ながら、僕は生の舞台を観たことはない。
今はアルカンパニーという名をおふたり(ご夫婦)で運営され、
演劇プロデュース等を行っているようだ。

平田満さんの名にひかれ参加したが、
演劇経験にかかわらず参加できる内容。
今まで参加したワークショップの内容とも重なった。

4時間みっちりメニューがこなされたが、
おふたりならではの、一面を見たかった気がする。

と言っても、今回のおふたりの役割はファシリテーター。
主役はワークショップを受ける方々なので、
それ以上を期待するのは、
あくまで僕の思い入れに過ぎないのだけど。

今度は、豊橋でも上演される芝居の本番を観てみよう。


 

劇評ワークショップと劇作ワークショップに参加する

カテゴリー │演劇

8月1日、16日の
西川奏功氏の劇評ワークショップ
8月2日、8日、9日の
はせひろいち氏の劇作ワークショップ
に参加。

劇評では
青年団の「ソウル市民」のDVDを観ての劇評、
劇作では
「工業の街」という短い戯曲
を書いた。



 

PLATでマームとジプシー「COCOON」を観た

カテゴリー │演劇

7月26日(日)14時30分~

すでにおよそ1か月前になりますが
この日の午前中は9時30分から
はままつ演劇・人形劇フェスティバルのチラシ一斉配布。
各劇団等が手分けして、
浜松市内のお店等に、チラシ・ポスターを置かせてもらったり、貼ってもらったり。

昼頃終わり、
豊橋駅そばのPLATへ。

沖縄戦で、看護活動に動員され多くが死んでいった女学生を描いた
今日マチ子さんの漫画を原作に舞台化した作品。
作・演出は藤田貴大氏。

役者や黒子やセットや音や映像がフル稼働している。
一様に若い役者たちは
行き絶え絶えになるまで走り回る。

音や映像を舞台上でオペレートし、
時には、長い詩を朗々と語り、
最後、「おくりびと」のような役割で、命絶えた女学生たちを
布でくるむ飴屋法水氏の存在がひとり大きい。

写真の公演ポスターは横向きです。
キャッチコピーが読みやすいです。