2018年04月30日22:46
劇団からっかぜアトリエで劇団からっかぜ「博士の愛した数式」を観た≫
カテゴリー │演劇
4月29日(日)13時~
「博士の愛した数式」は、小川洋子さんの小説を原作とする。
タイトルを見て、思った。
そうか、愛したのは、「数式」なのだ。
数学者として立派な業績を成し遂げた人の話ではない。
17年前、数学者としてこれからという時期に交通事故にあったことにより、
記憶障害を持つことになった「博士」と呼ばれるひとりの男の話である。
今は、数学雑誌の懸賞問題を朝から晩まで解くことに人生を費やす男が、
ひとりの家政婦とその息子と出会う。
「博士」は病ゆえの気難しさで、どの家政婦も長続きしない。
母子家庭で一人息子を育てる女が、
家政婦として「博士」の家に赴く。
「博士」は家政婦の人間性に興味があるわけではない。
誕生日を聞くのも、誕生日を覚えておいて誕生日プレゼントを贈るためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。
靴のサイズを聞くのも、何かの機会に靴をプレゼントするためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。
しかし、その発せられた数字が
通じ合うはずもなかった心をつなげていく。
「博士」の心配性も決して、
相手のことを気遣ってのことではないと思う。
心配性とは自己都合だ。
心配な自分を安心させるために、
心配な種をなくそうとする。
家政婦の女が「博士」の家に赴く最中
ひとりで過ごす息子の心配をするの同様である。
結果、ひとりで家にいるくらいなら
こちらに連れてきなさいと
自らの家に来ることを強要する。
初めて息子が来たとき、
撫ぜた頭のてっぺんがまっすぐだったことを
ストレートに呼び名を「ルート」(ルート記号を思い浮かべてください)と名付けるのも
相手は傷つくが、悪気はまったくない。
ただただ、ルート記号を体現するまっすぐな頭頂部が美しいと思うのである。
迷惑だが、最大限の誉め言葉なのである。
3人は、ひょんなことからつながる。
元阪神タイガース所属の江夏豊の存在である。
3人とも阪神タイガースのファンである。
そして江夏豊の背番号28番は美しい数字の代表格
完全数出るという。
(完全数をあらためてウィキペデアで調べるとこうある。
自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のこと。
6、28、496、8128、33550336、8589869056、137438691328、2305843008139953128と続く。
小説の作者小川洋子さんは
江夏豊の背番号28番との共通点を見つけ出したとき、
さぞかし嬉しかったことだろう。
結論から言うと、
数式を愛していたのが、
数字の一致という偶然も重なって
人の心をつないでいく。
つまり、
結果として人を愛することになる。
「博士」を演じた他屋雄一さんは、
動機と結果が矛盾する複雑な「博士」の役どころをうまくつかまえて、
演じていた。
それが、客席の笑いに結びついていた。
そして、「博士」の不動がまわりの人の心を動かす。
この回は、演劇版の脚本を書かれた福山啓子さんが客席にいらしていた。
僕が座る最後部のすぐ斜め前だった。

「博士の愛した数式」は、小川洋子さんの小説を原作とする。
タイトルを見て、思った。
そうか、愛したのは、「数式」なのだ。
数学者として立派な業績を成し遂げた人の話ではない。
17年前、数学者としてこれからという時期に交通事故にあったことにより、
記憶障害を持つことになった「博士」と呼ばれるひとりの男の話である。
今は、数学雑誌の懸賞問題を朝から晩まで解くことに人生を費やす男が、
ひとりの家政婦とその息子と出会う。
「博士」は病ゆえの気難しさで、どの家政婦も長続きしない。
母子家庭で一人息子を育てる女が、
家政婦として「博士」の家に赴く。
「博士」は家政婦の人間性に興味があるわけではない。
誕生日を聞くのも、誕生日を覚えておいて誕生日プレゼントを贈るためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。
靴のサイズを聞くのも、何かの機会に靴をプレゼントするためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。
しかし、その発せられた数字が
通じ合うはずもなかった心をつなげていく。
「博士」の心配性も決して、
相手のことを気遣ってのことではないと思う。
心配性とは自己都合だ。
心配な自分を安心させるために、
心配な種をなくそうとする。
家政婦の女が「博士」の家に赴く最中
ひとりで過ごす息子の心配をするの同様である。
結果、ひとりで家にいるくらいなら
こちらに連れてきなさいと
自らの家に来ることを強要する。
初めて息子が来たとき、
撫ぜた頭のてっぺんがまっすぐだったことを
ストレートに呼び名を「ルート」(ルート記号を思い浮かべてください)と名付けるのも
相手は傷つくが、悪気はまったくない。
ただただ、ルート記号を体現するまっすぐな頭頂部が美しいと思うのである。
迷惑だが、最大限の誉め言葉なのである。
3人は、ひょんなことからつながる。
元阪神タイガース所属の江夏豊の存在である。
3人とも阪神タイガースのファンである。
そして江夏豊の背番号28番は美しい数字の代表格
完全数出るという。
(完全数をあらためてウィキペデアで調べるとこうある。
自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のこと。
6、28、496、8128、33550336、8589869056、137438691328、2305843008139953128と続く。
小説の作者小川洋子さんは
江夏豊の背番号28番との共通点を見つけ出したとき、
さぞかし嬉しかったことだろう。
結論から言うと、
数式を愛していたのが、
数字の一致という偶然も重なって
人の心をつないでいく。
つまり、
結果として人を愛することになる。
「博士」を演じた他屋雄一さんは、
動機と結果が矛盾する複雑な「博士」の役どころをうまくつかまえて、
演じていた。
それが、客席の笑いに結びついていた。
そして、「博士」の不動がまわりの人の心を動かす。
この回は、演劇版の脚本を書かれた福山啓子さんが客席にいらしていた。
僕が座る最後部のすぐ斜め前だった。