劇団からっかぜアトリエで劇団からっかぜ「博士の愛した数式」を観た

カテゴリー │演劇

4月29日(日)13時~

「博士の愛した数式」は、小川洋子さんの小説を原作とする。
タイトルを見て、思った。
そうか、愛したのは、「数式」なのだ。
数学者として立派な業績を成し遂げた人の話ではない。

17年前、数学者としてこれからという時期に交通事故にあったことにより、
記憶障害を持つことになった「博士」と呼ばれるひとりの男の話である。
今は、数学雑誌の懸賞問題を朝から晩まで解くことに人生を費やす男が、
ひとりの家政婦とその息子と出会う。

「博士」は病ゆえの気難しさで、どの家政婦も長続きしない。
母子家庭で一人息子を育てる女が、
家政婦として「博士」の家に赴く。

「博士」は家政婦の人間性に興味があるわけではない。
誕生日を聞くのも、誕生日を覚えておいて誕生日プレゼントを贈るためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。
靴のサイズを聞くのも、何かの機会に靴をプレゼントするためではない。
あくまでも、発せられる数字に興味があるだけである。

しかし、その発せられた数字が
通じ合うはずもなかった心をつなげていく。

「博士」の心配性も決して、
相手のことを気遣ってのことではないと思う。
心配性とは自己都合だ。
心配な自分を安心させるために、
心配な種をなくそうとする。

家政婦の女が「博士」の家に赴く最中
ひとりで過ごす息子の心配をするの同様である。

結果、ひとりで家にいるくらいなら
こちらに連れてきなさいと
自らの家に来ることを強要する。

初めて息子が来たとき、
撫ぜた頭のてっぺんがまっすぐだったことを
ストレートに呼び名を「ルート」(ルート記号を思い浮かべてください)と名付けるのも
相手は傷つくが、悪気はまったくない。
ただただ、ルート記号を体現するまっすぐな頭頂部が美しいと思うのである。
迷惑だが、最大限の誉め言葉なのである。

3人は、ひょんなことからつながる。
元阪神タイガース所属の江夏豊の存在である。
3人とも阪神タイガースのファンである。
そして江夏豊の背番号28番は美しい数字の代表格
完全数出るという。
(完全数をあらためてウィキペデアで調べるとこうある。
自分自身を除く正の約数の和に等しくなる自然数のこと。
6、28、496、8128、33550336、8589869056、137438691328、2305843008139953128と続く。

小説の作者小川洋子さんは
江夏豊の背番号28番との共通点を見つけ出したとき、
さぞかし嬉しかったことだろう。

結論から言うと、
数式を愛していたのが、
数字の一致という偶然も重なって
人の心をつないでいく。
つまり、
結果として人を愛することになる。

「博士」を演じた他屋雄一さんは、
動機と結果が矛盾する複雑な「博士」の役どころをうまくつかまえて、
演じていた。
それが、客席の笑いに結びついていた。
そして、「博士」の不動がまわりの人の心を動かす。

この回は、演劇版の脚本を書かれた福山啓子さんが客席にいらしていた。
僕が座る最後部のすぐ斜め前だった。

劇団からっかぜアトリエで劇団からっかぜ「博士の愛した数式」を観た



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