穂の国とよはし芸術劇場PLATで世界劇団「零れ落ちて、朝」を観た

カテゴリー │演劇

11月27日(月)13時~

“世界劇団”というとても大きな名前がどうしても気になり、
勤め先の有休を使い、観に来た。

チラシは手元にあったが、書かれている作品についての情報を入れずに観たせいで、誤読があったかもしれない。
僕は具体的な事象についての話と言うよりどんなとらえ方もできる普遍的な話として観た。

グリム童話「青髭」と第2次世界大戦中の戦争犯罪「生体解剖実験」を題材にしているのだという。

「青髭」は、結婚した妻が次々と行方不明になり、7番目の妻に小部屋に決して入ってはいけないと告げるが、
我慢できなく入ってしまい、そこに過去の妻たちの死体を見つける話。

「生体解剖実験」は遠藤周作「海と毒薬」でも描かれている。

舞台中央にはひとつの扉。
開演を待つ舞台には、静かに海音が流れている。

女(小林冴季子さん)が登場し、語りだす。
それは、まるでおとぎ話を語るかのように。
「小さな白い家がありました。そこからは川が流れ、大きな‥‥‥」

女はその家に目玉がぎょろりとした夫だという男と住んでいる。

男(本田涼さん)がやけにいい姿勢で登場する。
音が鳴り響く中、男と女の妙にぬるりとしたダンス。
開いた扉の周辺で絡みあった軟体系の動き。
そこにいつのまにかひとりの体が絞り出されるように出現したのは驚いた。
舞台に貼り付いた身体はまるで液体のように……。
そうだ。
タイトルの中の、零れ落ちて、という言葉がふさわしい。

この三人目の登場人物は、脚本・演出も担当する本坊由華子さん。
スタンダップコメディアン清水宏さんとのアフタートークでも触れられたように、
現役の精神科医であることは、演劇自体とは関係ないが、ひとつの代名詞として語られるのは仕方がないだろう。

その上、実際のお父さんが、外科医なのだという。
青髭をモデルにしたメスを握る登場人物と重なるが、
事前情報のない僕は、自らの考える正義を信じ邁進する、
どの時代や場所でも当てはまる人物だと思い観ていた。

例えば戦争に邁進する人、
天下取りに邁進する人、
僕自身の何かにも当てはまるだろう。

進歩のため、
繁栄のため、
幸せのため、
平和のため……。

それは罪が同居し、破滅の道を辿る。

ラストはよく出来たお伽話の結末のようで、
演劇らしい手法を駆使し、気が利いていた。
呆然と座り込む男の姿は情けないが、
妙に美しい。

穂の国とよはし芸術劇場PLATで世界劇団「零れ落ちて、朝」を観た



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