アクトシティ浜松中ホールで「歌劇 BLACK JACK」を観た

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18日(日)15時~

雨模様だった。
自宅から会場のアクトまでバスで行くのも選択肢だったが、
結局車で行くことにした。
駐車券が3時間分手元にあったので、
アクトの地下の駐車場に停めようとした。
混んでいて、
ゲートをくぐってから、
空きスペースをさがすのに
ずいぶん時間を食った気がした。
当然ながら、会場より遠くに停めることになる。

格闘技らしきイベントを行っていた
展示イベントホールより
連絡通路を通り、中ホールへ向かう。

BLACK JACKとは、ご存知のように手塚治虫による、天才医師を主人公とする少年漫画。
天才的なオペ技術を持ちながら、法外なオペ代を請求するという矛盾した存在である。
映画化やドラマ化はされているが、
歌劇、つまりオペラとしてのBLACK JACKとはどんなものだろうか。

実は昨年8月、初演が上演された。
その際は浜松市の市民オペラとして上演された。
僕は予定が重なり、観に行かなかった。
過去の画像を見ると、
200名が参加し、舞台美術も衣装も華やかだったようだ。

今回は再演ではあるが、
先ず、演出者が変わった。
前回は振付を担当していた富士山アネットの長谷川寧さんが、
構成・演出・振付を担当している。

舞台全体の色調は主に黒と白である。
衣裳も黒と白で統一されている。
スクリーンに映像が映し出され、色が加わる。
場面により、血の赤が加わる。

演出者は、MCの役割も兼ね、舞台上に常にいる。
開演にあたっての注意や
BLACK JACKについての紹介ほか、
3章ある各章の紹介を兼ねた導入も受け持つ。
映像に映し出される仕掛けを観客から見えるところでしたりする。

12名の出演者たちは役者ではない。
歌手である。
オペラであれば、歌手が演技をするにとどまるが、
歌手が歌うばかりでなく、演技をし、踊り、舞台セットを移動する。
彼らも、それらに備えて、出番でなくても、
観客が見えるところで、スタンバっている。
つまり、担当する役割が多く、忙しいのである。

でも一番忙しいのは、
オーケストラのない歌劇で、
台詞があるときはもちろん全編、ひとりピアノ演奏をし続ける
音楽監督でもあり、全曲の作曲者である
宮川彬良さんだろう。

映像の世界でも、漫画の実写化は難しいと言うのが定評だ。
特に日本の漫画はディテールがしっかりしていて、
完成度が高いので、難しいように思う。
アメリカ映画はスーパーマン、バットマン、スパイダーマン等を観ても、
むしろ映画の方がスケール感がリアルに表現できたりする。
これは、予算や、特撮技術の高度さがあるだろう。

BLACK JACKも、いったいどんな形で舞台に現れるのだろう、
と心配した。
これは漫画のBLACK JACKではなかった。
原作のモチーフも活かしてはいるが、
完全なオリジナルのオペラ版BLACK JACKだった。

ラストは浜松市民の合唱団の人たちも加わり、
大円団の歌が全員により歌われる。
その内容は、コップ一杯の水が、
地上に上がり、雲になり、
雲と言うのは私たちを見守る存在で、
BLACK JACKという存在も、
私たちの命を見守る、見張り人の役割をしているというのだ。
これは、突然の展開であるが、
意表を突かれ過ぎて、むしろ感動した。
人々の真ん中に突っ立ち朗唱するBLACK JACKは
わけ分からず恰好いい。
そして、その感動の矛盾を引き戻すためか
「でも、礼はたんまりもらうぜ」などというセリフで幕は閉じる。

来年2月に鳥取県の米子でも公演があるそうだ。