「キャベツ」というタイトルの短いシナリオ

カテゴリー │書いた

キャベツ




登場人物

    夫

    妻





〇夫婦が住む家の食卓 朝

  夫が冷蔵庫の中を見ている。
  スーツの上下と白いカッターシャツを着ている。
  ボタンは何個か外し、くたびれた着こなし。
  自宅着姿の妻は食卓の椅子にどっかり座っている。

夫「焼きそばつくろうかな」
妻「・・・あ、そう?」
夫「(探しながら)肉は?」
妻「ごめん。切らしちゃった。」
夫「肉、ないのか」
妻「きのう、焼肉やったから」
夫「ひとりで食べたのか?肉、あんなにあったのに」
妻「そう?そんなに残ってなかったよ」
夫「あったよ。たくさん」
妻「冷蔵庫、閉めてよ」
夫「ああ。(閉めずに)あれ~?ないの?」
妻「何が?」
夫「キャベツ」
妻「・・・キャベツって何?」

  夫、妻を見る。

妻「閉めてよ。私のチーズケーキ入ってるんだから」
夫「え?(冷蔵庫見て)何だよ。お前のだけか?これ、うまいヤツじゃないか」
妻「冷蔵庫閉めて」
夫「(さがして)ないの?キャベツ」
妻「だから、キャベツって何?」
夫「キャベツって何?って、焼きそばにはキャベツだろ」
妻「ふーん。そういうのあるんだ。知らなかった」

  夫、冷蔵庫を強めに閉める。

夫「馬鹿にしてんのか。キャベツはキャベツだろ」
妻「キャベツはキャベツ・・・。わたしはわたし・・・」
夫「キャベツがないと焼きそば作れないよ。肉だってないし」
妻「肉はごめん。でも、キャベツってなあに?」

  夫、妻に向かい合い、椅子に座る。

夫「おまえはトンカツの付け合わせに何を千切りにする?」
妻「千切り?千に切る・・・。怖い」
夫「おまえは何を言ってるんだ」
妻「トンカツはトンカツ。豚肉に衣をつけて揚げて。それ以外に何が必要?」
夫「ソース」
妻「ソースは別。お好みだし」
夫「おまえ大好物だよな。ロール・・・(返事を促している)」
妻「ケーキ?」
夫「それも好きだろうけど、もっと好きなもの」
妻「わたし、ロールケーキほんとに好きなんだよ」
夫「知ってるよ。昔から・・・。おまえ、甘いもん取り過ぎだぞ。若くないし」
妻「ほっといてよ」
夫「ロールキャベツ」
妻「何それ?」
夫「ロールキャベツはロールキャベツだよ」
妻「だからキャベツって何?ロールはケーキだよ」
夫「・・・」

  夫、立ち上がり、財布を手に取る。

妻「どこ行くの!」
夫「キャベツ買いに行く」
妻「わけわかんないもの買いに行くって何よ」
夫「キャベツだろ」
妻「また、うそついて、どこか行く」
夫「スーパーだよ。あ、まだやってないか。コンビニ、キャベツ売ってたかな?」
妻「行かないでよ」
夫「・・・コンビニ、キャベツないし」
妻「キャベツって何よ」
夫「(スマホを取り出し、操作しながら)キャベツってのはな・・・。あ(キャベツの画面見つけた?)」
妻「それはなし」
夫「(妻に画面を突き付けようとして)あ」
妻「それはずるいよ・・・ずるい」

  夫、妻に目の前に差し出したスマホを引っ込める。

夫「・・・焼きそば作るかな」

  夫、フライパンを用意し、ガスコンロの上に置く。
  冷蔵庫から、袋詰めの焼きそばとソースを取り出す。
  火をつけ、フライパンに油を引く。
  袋から焼きそばを取り出し、フライパンに入れる。
  ほぐしながら焼く。
  夫、周りを見回している。
  皿のありかを見つけ、素早く取りに行く。
  ソースをかけ、焼きあがった焼きそばを皿に盛る。

妻「ねえ。昨日どこ行ってたの?」

  夫、返事はせず、焼きそばを食卓に運ぶ。

夫「あ、お前も食うか?もう一個あった」
妻「いらないよ。キャベツのない焼きそばなんか」


                   
                     おわり




※なぜかSTAEDTLERの36色の色鉛筆が2セットある。
なぜかというのに答えを述べることは出来るが
僕自身で購入したものではない。

縁があり、手に入れたものだ。
とは言え、そう使うものではない。
色鉛筆画が趣味と言うわけでもないので。

年賀状とかで思い立つと使うように心がけているが、
何年も手元にあるのに全色揃ったままだ。
36色×2で合計72本。

と言っても、使用頻度が高くて、
他と比べてとりわけ短い色もいくつかある。

ざっと青、水色、紺、赤、朱色、黄、緑、草緑・・・。
好きな色というより、書いたものの色、ということだろう。
でも、好きな色とも言うのかもしれない。



 

PEOPLE 第6章 おわり

カテゴリー │ブログで演劇

   マスクをした白衣の人たちがやってくる。
   一人は車椅子を押している。

鍛冶 あ、いた。

   お年寄りのトシ子、警察官に付き添われてやってくる。

連尺 トシ子さん~。

   鍛冶と連尺、駆け寄る。

連尺 (警察官に)ほんと、すみません~。
警察官 よかった。
鍛冶 ありがとうございます。
警察官 いえいえ。私はこれで。

   去る警察官にお辞儀をする鍛冶と連尺。

連尺 もう~、何してたんですか~。ほんと探したんですから。
鍛冶 あ。

   トシ子、ふらつく。
   鍛冶と連尺、あわてて受け止める。

連尺 もう、危ないっ。さあ。

   連尺、車椅子にトシ子を座らせようとする。

トシ子 ああ、いらないのいらないの。
連尺 座って。
トシ子 あなたたち、どっか行っててちょうだい。ひとりで帰るから。
連尺 座りなさい!

   強くおさえ、座らせようとする。

連尺 もうっ。探知機付けますよ!・・・あ、すみません。
鍛冶 トシ子さん、ちょっと疲れたようだから少し休みましょうね。ねえ、トシ子さん、今日は楽しかった?

   トシ子、自分から車椅子に座る。

トシ子 そうねえ。・・・とっても楽しかったけど、またあの人に会えなかったわ。

   「テネシー・ワルツ」が流れる。

N 一九五二年は、美空ひばりの「リンゴ追分」などと共に、アメリカで生まれ、パティ・ペイジが唄って大ヒットした曲に日本語訳をつけて、江利チエミが唄った「テネシー・ワルツ」が流行った。ちなみに「テネシー・ワルツ」は、他人に恋人を奪われてしまう内容の歌である。

トシ子 みなさん、帰りましょう。

   鍛冶と連尺、顔を合わせる。

鍛冶 はい、帰りましょう。
連尺 帰りましょう。
トシ子 ねえ。今晩のお献立何でしたか?
連尺 そんなのいちいち覚えてません。
トシ子 あら、そう。では、有楽街でも食べ尽くしましょうか。
連尺 (首をひねりながら)あ、トシ子さん、マスク。

   トシ子、さっき佐藤からもらったマスクを取り出す。

鍛冶 それ、どうしたの?
トシ子 ん?ああ。安倍さんがくれたの。
鍛冶・連尺 安倍さん?

   三人、去っていく。



                          おわり






 

PEOPLE 第5章 風と共に去りぬ

カテゴリー │ブログで演劇

   二人は有楽街を歩く。
   風景は移動する。
   二人は立ち止まる。
   映画館の看板がある。

アキオ あった。
トシ子 きれい。・・・ゴーン ウイズ ザ ウインド。
アキオ 風と共に去りぬ。アメリカではね、一九三九年に上映されたんだけどね。
トシ子 一九三九年って、第二次世界大戦が始まった年。
アキオ ドイツ軍がポーランドに侵攻して、日本もアメリカもまだまだって感じだったと思うけど、どことどこがくっつくつていうのが広がって行って、日本とアメリカは敵国。
十三年たってようやく日本で観ることができたわけだ。ま、映画の方はアメリカの南北戦争が舞台だけどね。
トシ子 あ~、よかった。
アキオ 何?
トシ子 だって、十三年前に上映していたら、一緒に観られなかったでしょ。
アキオ トシ子さん・・・。
トシ子 これ観ましょう。『風と共に去りぬ』。
アキオ はい。

   二人、勇んで映画館に突入していく。
   二人、がっかりして戻ってくる。

アキオ くそっ。立ち見でも入れないって。前売り買っておけばよかった。ごめん。
トシ子 仕方ないわよ。観るって決めていたわけじゃないんだから。
アキオ この映画、三時間四十二分だって。次の回、何時だよ。(時計見て)わっ。どうする?チケット買う?それとも他の観ようか。チャンバラでもいいよ。西部劇でも、あちゃらかコメディでも、ゾンビ映画でもいいや。やってっかな?この時代。

   どんどん人が通り過ぎる。

アキオ 何だ。どんどん人が増えていく。日曜日はやけに混むな。

   トシ子、看板を見ている。

トシ子 ヴィヴィアン・リー。
アキオ ああ、スカーレット・オハラ役のね。有名女優が何人も候補に挙がったんだけど、なかなか適役がいなくて、撮影が始まってから、たまたま見学に来ていたヴィヴィアン・リーがプロデューサーの目に留まって、一発で決まったらしいよ。「スカーレット・オハラがここにいる」って。

   看板を見つめるトシ子を見つめるアキオ。

N アキオは叫びたくて仕方がなかった。「スカーレット・オハラがここにいる」。

アキオ オハラはね、どんな降りかかる苦難もくじけず乗り越えていくんだ。

   人通りが激しくなっていく。

トシ子 え?小原さんがどうしたの?

   どんどん激しくなる。  

アキオ 小原さんじゃないよ。スカーレット・オハラ。

   もっともっと激しくなる。
   アキオ、人波に飲まれていく。

トシ子 え?

   トシ子も反対から来た人波に飲まれていく。

アキオ トシ子さん・・・。

   二人、渦潮に飲まれたように、ますます離れていく。

トシ子 アキオさん!

   アキオの姿はすでに見えない。

トシ子 アキオさん。

   トシ子、アキオの姿を探し、どんどん歩いていく。
   アキオもどんどん歩いている。ただし、トシ子の行き先とは逆の方へ。
   二人の姿は消える。
   トシ子が戻ってくる。
   映画館を見上げ、去っていく。

N トシ子は職場の紡績工場の寮に戻らなければならなかった。遠くから親元離れてやってきている若い女工たちを守るための厳しい門限があったのだ。

   映画館では、アキオがひとりスクリーンを見つめている。
   「タラのテーマ」が流れている。

N その後、二人は有楽街に何度か来ているが、出会うことはなかった。二人を引き合わせたトシ子の先輩はほどなく職場をやめ、結婚の為、生まれ故郷へ帰っていった。二人を結びつける人はいなくなった。こういうことはよくあることだ。今のように携帯電話があれば別だが。ラインの交換もしなかった。そして、しばらく経ち、トシ子はアメリカに旅立つことになる。ハリウッド女優のための衣装をつくる人になるために。もちろんこの時はすでに、この日観ることが出来なかった『風と共に去りぬ』を絹江と峰世と共に観ている。


(第6章 最終回に続く)





 

PEOPLE 第4章 ラーメン屋

カテゴリー │ブログで演劇

   店主、ひたすら手を動かし、仕事をしている。
   六脚の椅子があり、二脚には既に先客。田町と神田。
   四人、席に着く。

田町 コカ・コーラ!

   店主は返事をしない。

峰世 わたし、ラーメン。
絹江 わたしも。
トシ子 わたしも。
アキオ 僕も。
店主 はいよ。ラーメン四丁。

   田町は「コカ・コーラ!」に返事がないのに不満。

神田 ようやくGHQが出ていくな。戦後何年たつ?
田町 ああ。ヤンキーゴーホームだ。やっと俺たち日本人の夜明けがやってくる。
神田 馬鹿言え。しっかり置き土産を置いて行っただろ。
田町 置き土産?コカ・コーラか?・・・おやじ、コカ・コーラ!

   店主は返事をしない。

神田 占領軍はいないけど、アメリカ軍がいつまででも日本にいられる条約結んだんだ。
田町 日本を守ってくれるんだろ?
神田 それのどこが日本人の夜明けだ。
店主 はいよ。ラーメンお待ち。

   ラーメンを四人に渡す。
   おいしそうにすする。

田町 まあ、いいじゃないの。平和ならさ。
神田 どこが平和だ。去年だってお隣の国で戦争があって、日本人が何人も死んだんだ。
田町 朝鮮戦争か。だからアメリカに守ってもらった方がいいんだよ。日本はもう二度と戦争しないんだ。その象徴なんだよ。平和のさ。神田。
神田 何だ。田町。
田町 俺はさ、アメリカへ渡ろうと思ってるんだ。
神田 何だと。何を考えているんだ。さっき、日本人の夜明けが来たと。おまえ、俺と日本で一緒に。
田町 悪いが、もう決めたんだ。パスポートも取った。
神田 いつ行くんだ。
田町 明日。
神田 あした~!?
田町 今夜浜松を出て、東京に行く。東京までだって遠いよな。
神田 アメリカはもっと遠いよ。
田町 これが、俺とお前の日本での最後になる。大いに語り合おうじゃないか。悔いがないように。おやじ、コカ・コーラ!
神田 コカ・コーラなんか飲むな!

   四人はちょうど食べ終わり、そろそろ出る?と合図しあう。

神田 コカ・コーラなんか飲むな。ここのおやじさんもコカ・コーラきらいなんだ。だからお前を無視し続けるんだ。そうですよね。おやじさん。あまっちょろいこいつの頬をひっぱたいてくれ。アメリカなんか行くなと言ってくれ。
店主 いえ、わたし、不器用なんで、四角四面の返答しかできないんです。お客さんは、コカ・コーラをくれと言った。ねえ。そうですよね。
田町 ああ。
店主 ところがですね。ところがですよ。うちはペプシしか置いてないんです。コカ・コーラはないんです。ないものに返事はできません。

   店主の妻、奥から顔を出す。

妻 あんた、市役所行ってくるよ。
店主 おまえ、まだお客さんがいらっしゃるだろ。それに日曜日。
妻 日曜もやっているんだよ。何かしらお役所に届け出るものが多いんだ。肝心なことがなんにも出来ずに、一生届け続けなくちゃならない予感がするよ。やだやだ。
店主 わかったわかった。それはそうと、間違えるなよ。市役所の場所が変わったよ。利町(とぎまち)から元城だ。そう離れてはいないけどな。
妻 わかってるよ。お城があったところだよ。おっきくなったよ。天下でも治める気かねえ。
店主 もっとおっきくなるさ。どんどんどんどん。いずれお城さ。だからあそこにつくったんだ。市役所。市役所城さ。
神田 田町、おまえ、アメリカ行って、いつ帰ってくるんだ。
田町 さあな。たぶん帰ってこない。
神田 あっち行って、何するんだ?
田町 さあな。何も考えていない。アハハ。
店主 へい。ペプシお待ち。

   店主、瓶のペプシを田町に渡す。
   田町はペプシをごくごく飲む。

神田 俺もペプシだ。

   店主、瓶のペプシを神田に渡す。

神田 馬鹿め。

   神田はやけくその様にペプシをごくごく飲む。
   四人、出ていく。

店主 まいどありい。

   店主の妻は市役所へ向かい、店も消えて行く。

アキオ じゃあ、お二人とはここで。
絹江 いざイチゴパフェ!
峰世 いざクリームソーダ!さくらんぼつき。
絹江 トシ子。
アキオ いえ。トシ子さんは、僕と。
絹江 (峰世に)カフェ行こ行こ。
峰世 うん。トシ子。

   絹江と峰世、トシ子に手を振り、歩いていく。
   トシ子も手を振っている。

アキオ すみません。僕が追い払ったみたいで。
トシ子 いいんです。二人とは明日職場で会いますから。私の方こそごめんなさい。ラーメン食べるべきじゃなかった。
アキオ いいですよ。うまかったし。
トシ子 そうですよね。映画を観た後も食べますよ。私。いっぱい。もう食べられないってなっても食べますよ。ああ。何食べようかな。
アキオ ああ。食べよう。有楽街を。有楽街を食べ尽くそう。

(第5章に続く)



写真はやはり「キッズまちなか探検隊 アルコモール有楽街老舗店探訪」から転載。
1952年には日米安全保障条約が締結され、
浜松市役所が現在の場所に移転した。




 

浜松市博物館で「まちの盛り場」というテーマ展を見た

カテゴリー │いろいろ見た

6月7日(日)
浜松市博物館で「まちの盛り場」というテーマ展を行っていたので、
足を運んだ。
静岡新聞の紹介記事で知ったのだが、
特に惹かれたのが、現在、勝鬨(かちどき)という
ビリヤード場があるところ(こちらも十分歴史がありそう)が
かつて、「勝鬨亭」という寄席(1894年開場)であったという記事。
当時の主人馬渕すぎさんが
古今亭志ん生さんと写った写真が展示されているということだった。
記事を読んだ時は勝鬨亭で撮った写真かなと思ったが、
こちらは、志ん生の家を訪ねた時のツーショット写真だった。


※この写真の他、撮影OKとなっていたので、掲載させていただく。

博物館へ行くつもりで
駐車場に停めて博物館に向かおうとしたが、
途中、縄文時代後期から晩期(約3~4千年前)の遺跡である
蜆塚遺跡の貝塚やら、復元された住居やらがあり、
一通り回り、結構な寄り道をした。




竹林も抜けた。

博物館に入館してからも
テーマ展を見る前に
浜松の歴史を伝える
原始時代→古代時代→中世→近世→近現代と
これまたつぶさに展示を見ていった。

「まちの盛り場」テーマ展では
今はなき松菱百貨店の開店時の建物模型や写真があり
年配のご夫婦らしいお客さんは
屋上で食べたアイスクリームのことを話していて、
ご主人は「黄色くてなあ」というと
奥さんは「そう?黄色かった?もう少し・・・」と答えたので、
ご主人は「黄色かったよお」と押し切った。
黄色の認識はそれぞれだと思うが、
僕の思い出では「黄色っぽかった」。

どうやら僕にはこういうものを
つぶさに見てしまう癖があるようなので、
このような時は情報量の多さに対処できない気分になる。
好みのものをパッパッとチョイスすれば
もっと印象的なものも残るのであろうが、
ずいぶんたくさん見たようだが、
どれも似たようなもののような気もすると、
時間をかけた割には
どうもぼんやりしていたりする。

行ったことはないが、ロンドンにある大英博物館は
収蔵品が約800万点あるそうだ。
それをひとつひとつつぶさに見ていったとしたら・・・。
大英博物館などに行くものではない。
いつでも行ける近所に住んでいない限りは。

しかし、浜松城を中心とした城下町の様子がわかる模型を見ていると
お城を中心に東海道が通る道筋に添って
街が形成されていったのだ、ということが想像できた。
今もあるお寺が点在していて、
仏教とのつながりを考えてみたい気もした。

その後近代化につれ、
鉄道が停まる駅が中心となっていったのだと思う。
それが、今は駅が中心となりえない。
誰もが自家用車を持つようになったことはもちろん大きいが、
中心となりえる場所がなくなったとも言える。

ただし、これは地方都市に限ってのこと。
大都市、とりわけ東京は
鉄道網はますます盤石に敷かれ、
たとえば若者が車を持たなくなろうが、
何の問題もなく生きることができる。

ただし、日常の生活を取り戻せば、
そこはソーシャルディスタンスを保つことは不可能になる。



7月12日までテーマ展は開催されている。




 

PEOPLE 第3章 峰世と絹江

カテゴリー │ブログで演劇

トシ子 峰世。絹江。
峰世 お休みだから、マチ出てきたのよお。
絹江 (アキオを見て)あら?
峰世 もしかして。デート?
絹江 やだあ。

   絹江と峰世、二人で盛り上がっている。

トシ子 今日初めてなのよ。
絹江 紹介して。
アキオ こんにちは。初めまして。田中アキオです。
峰世 うわっ。やったね。挨拶できる男。
トシ子 職場の友人。こちら峰世。こちら絹江。
峰世 どこで知り合ったの?
トシ子 まあ、いいじゃない。
絹江 明日聞く聞く。
峰世 紡績工場のお仕事終わったら。
絹江 そんなの待てない。お仕事中にも聞いちゃう聞いちゃう。怒られても聞いちゃう。
峰世 それも待てない。今聞いちゃう。
絹江 今聞く聞く。
トシ子 無理よ。
峰世 言え言え。
トシ子 言えない。
絹江 言え言え。
トシ子 (手を振り)いえいえ。
峰世 YEAH~YEAH~。
絹江 YEAH~YEAH~。
トシ子 言えん言えん。
アキオ 僕が言おうか。
トシ子 あ。
アキオ まずかった?
トシ子 まずくは。
峰世 言っちゃえ。
絹江 聞こうか。
峰世 カフェで聞こうか。
絹江 新しいカフェできた。
トシ子 あそこよね。わたし、行きたい!
峰世 行こう。
絹江 話を聞きに。
トシ子 (アキオに)一緒に。
アキオ ・・・映画。
絹江 私イチゴパフェ。
峰世 私・・・行ってから決める。
トシ子 どっちだっけ?
峰世 あっち。

   四人はカフェへ向かおうとする。

峰世 やっぱ、こっち。いや、あっち。
絹江・トシ子・アキオ どっちだよ。
峰世 うん。あっちでよかった。

   四人、カフェへ向かう。
   再び、風景動く。
   洋食屋、蕎麦屋、寿司屋、中華料理屋、鰻屋などが美味しさを振りまき、誘惑。
   四人はその誘惑たちをすりぬける。

絹江 いざイチゴパフェ!
峰世 いざクリームソーダ!さくらんぼつき。
トシ子 いざ・・・え~と。プリンアラモード。
絹江 おっしゃれ~。
峰世 (しゃれた言い方で)アッ、ラ、モードオ。
絹江 おフランスっぽい~。シャンゼリゼっぽい~。

   乗り気でないアキオを「さあさあ」とみんなで促す。

アキオ 僕はまあ、珈琲でいいや。
絹江 珈琲でいいって、珈琲に対して失礼だと思う。
峰世 こういう男の人はきっとこう言う。僕はまあ、トシ子でいいや。
絹江 言いそう。
峰世 トシ子、こんな男でいいの?生涯を託すのは!
トシ子 生涯・・・。
アキオ 僕は、珈琲を飲む。珈琲が大好きで仕方がないんだ!
峰世 行こうか。

   再び、各店の美味しそうな誘惑。

絹江 いざイチゴパフェ!
峰世 いざクリームソーダ!さくらんぼつき。
トシ子 いざプリンアラモード!
アキオ いざ珈琲!
絹江 いざイチゴパフェ!
峰世 いざクリームソーダ!さくらんぼつき。
トシ子 いざプリンアラモード!
アキオ いざ珈琲!
絹江 いざイチゴパフェ!
峰世 いざクリームソーダ!さくらんぼつき。
トシ子 いざプリンアラモード!
アキオ いざ珈琲!

   各店の誘惑続く。

絹江 いざ寿司屋!あ、イチゴパフェ!
峰世 天ぷら!あ、うどん!トンカツ!鰻!ハンバーグ!カレーライス!いざラーメン!
絹江 いざラーメン~。
峰世 朝から何にも食べてない。
絹江 そういうこと言う? わたしも食べてない。

   峰世、絹江、ラーメン屋の方へ。

トシ子 カフェは?
峰世 デザートは食事の後。
絹江 これ鉄則。
峰世 二人も行こう。
アキオ だって映画。
絹江 ラーメンお嫌い?
アキオ 嫌いじゃないけど。
峰世 なら、行こう。いざラーメン!
絹江 いざラーメン!

   四人、ラーメン屋へ。

(第4章に続く)



写真は前回同様「キッズまちなか探検隊 アルコモール有楽街老舗店探訪」から転載。
2人はぜんぜん映画を観ることができません、という意味で
有楽街にかつてあった映画館。



 

PEOPLE 第2章 トシ子とアキオ

カテゴリー │ブログで演劇

   若い男、田中アキオがいる。
   若いころのトシ子が走ってやってくる。

アキオ トシ子さん?
トシ子 アキオさん?すみません。お待たせしてしまって。
アキオ いえ。そんなことありません。ちょうど今来たところです。
N アキオはずいぶん長く待っていた。
アキオ どこ行きますか?
トシ子 そうですねえ。アキオさんはどこへ・・・。
アキオ 僕ですか。
トシ子 パチンコ。
アキオ え?トシ子さんパチンコやられるんですか?
トシ子 いえ、男の人みんなお好きかと。
アキオ あれは野郎同士か、それでなければひとりでやるものですよ。
トシ子 じゃあ、アキオさんは映画なんかは?
アキオ 映画かあ。(少し考えている)
トシ子 だめですか・・・。
アキオ いやあ、いいですよ。映画でも。
トシ子 映画行きましょう。映画。
N アキオは最初から映画を観る気満々だった。

   二人は歩き始めるが、前へは進まない。
   一九五二年の有楽街の風景が現れ、移動していく。
   有楽街を歩いているように見える。

トシ子 どんなジャンルがお好きですか?
アキオ 僕はなんでも。トシ子さんが観たい映画を。
トシ子 え~と。戦争映画は?

   悲惨な戦争映画の一場面が演じられる。
   映画を観ている二人、暗鬱とした気分。

アキオ ・・・まだ戦争の記憶新しいかも。
トシ子 じゃあ、コメディは?

   コメディ映画の一場面が演じられる。
   トシ子だけが大笑いして、アキオの顔色は曇っている。

アキオ ・・・面白いかもしれないけど。
トシ子 お嫌い?ウエスタンは?(銃を撃つ格好)バンバン。

   ウエスタンの一場面が演じられる。
   皆殺しの場面にトシ子興奮し、アキオ冷めた顔。

アキオ ・・・これもちょっと。
トシ子 チャンバラ。(刀でさばく格好)

   チャンバラの一場面が演じられる。
   皆殺しの場面にトシ子興奮。
   アキオ、耐え切れず口元をおさえる。

トシ子 あら大変。お家へ帰られますか?
アキオ (慌てて立ち上がり)いえ、大丈夫です。
トシ子 どうしましょう。もう少し穏やかな映画。
アキオ こんなのは。『君の名は』のような。
トシ子 君の名は?
アキオ ラジオ放送の。最近始まったんですけど、人気あるみたいですよ。
トシ子 どんな話?
アキオ 真知子と春樹っていう若い男女の登場人物が。
トシ子 真知子と春樹。
アキオ はい。二人は、会いたいんだけど会えないんです。
トシ子 会えない。
アキオ でも大丈夫。いつか会えます。きっと会えます。
トシ子 いつ。
アキオ いつか。ラジオ聴き続ければいつか。
N 一九五二年四月から毎週木曜八時半から三十分、NHKラジオで放送されていた。翌年、人気を受けて映画化され、主人公の氏家真知子のストールの巻き方を真似した「真知子巻き」が女性の間で流行った。
トシ子 私も聴くわ。その今から六十年以上後に流行りそうな漫画映画と同じタイトルのラジオドラマを。
N もちろんトシ子は、二〇一六年の新海誠作『君の名は。』は知らない。
アキオ そんなようなラブストーリー。どうです?トシ子さん。
トシ子 (関係なく)かわいい!

   トシ子、洋品屋に引き寄せられる。

トシ子 これ、このお洋服。
N この時代の若い女がなんにでも「かわいい」と発したかどうかはわからない。
トシ子 ほら。

   トシ子、ストールを手に取る。
   そして、「真知子巻き」のように巻く。
  
洋服屋 お嬢さん、お似合いですよ。
トシ子 そう?
洋服屋 これから流行りそうだ。
アキオ これが?泥棒みたい。
洋服屋 きっと流行る。そんな予感がする。
N ラジオドラマの大ヒットを経て、映画化され、岸恵子が演じた氏家真知子のストールの巻き方が「真知子巻き」と呼ばれ、女性の間で流行する。

   音楽が鳴り、トシ子、少し踊る。

洋服屋 毎度ありがとうございます。

   アキオ、財布を取り出し、金を払う。

トシ子 あ。
アキオ いいからいいから。

   他のお店が商品を手にし、売りこむ。
   次々と新しい衣装や靴や帽子や時計やネックレスや指輪が身に着けられていく。

トシ子 いいの?こんなに。
アキオ いいからいいから。

   アキオ、こっそり財布の中をのぞいて渋い顔。

トシ子 さあ、映画館。その後お食事するでしょ?
アキオ もちろん。
トシ子 何食べる?
アキオ え?今、映画。
峰世・絹江 トシ子~。

   峰世と絹江がやってくる。


(第3章に続く)



写真はお話をお聞きした寛永堂さんからご提供いただいた
2012年8月20日に有楽街商店街振興組合により
まとめられた「キッズまちなか探検隊 アルコモール有楽街老舗店探訪」
から転載。
1952年有楽街の開通式。


 

PEOPLE 第1章 はじまり

カテゴリー │ブログで演劇

5月31日に有楽街で読み合わせた戯曲。


登場人物

お年寄りのトシ子(85歳)
佐藤(40歳)
中村(25歳)
警察官(30歳)
若いころのトシ子(17歳)
アキオ(20歳)
洋服屋(35歳)
峰世(17歳)
絹江(17歳)
神田(22歳)
田町(22歳)
ラーメン屋の店主(42歳)
店主の妻(38歳)
鍛冶(38歳)
連尺(32歳)
ナレーター(N)





   「テネシー・ワルツ」の前奏が演奏される。
   お年寄りのトシ子がやってくる。
   しばらくウロウロしている。

トシ子 あの。

   誰かに声をかける。

トシ子 ここ、有楽街ですか?

   誰か優しいお客さんは、そうだ、という返事をしてくれる。

トシ子 法被姿見かけないけど。浜松まつりは?

   マスクをしている佐藤が通りかかる。

佐藤 浜松まつりは中止になったら。
トシ子 あら、そう。浜松まつりで賑やかかと思ってやってきたのですが。
佐藤 まあ、しょんないら。これじゃあ、ねえ。

   佐藤、どこかから一枚のマスクを取り出す。

佐藤 やるで。一枚だけだけど。
トシ子 ああ。(周りを見回し)マスク。
佐藤 使って。今どきしてないと捕まるよ。
トシ子 捕まる?

   トシ子、マスクをつける。

佐藤 じゃあ。店の仕入れがあるもんで。
トシ子 (深々とお辞儀をし、佐藤を見送る)どうしようかしら。映画でも観ようかしら。映画館は・・・。

   トシ子、映画館を探す。

トシ子 (通りがかりの中村に)あの。

   マスクをした中村、立ち止まる。

トシ子 映画館がこのへんに。
中村 映画館?・・・。あ、い~ら?
トシ子 い~ら?
中村 シネマい~ら。やってないんじゃ。
トシ子 どちらですか?
中村 こっちです。
トシ子 そっち?
中村 あっち。

   トシ子、中村についていく。
   シネマい~らの看板がある。

中村 やっぱり休み。ごめんなさい。
トシ子 いいのいいの。あなたが悪いわけじゃない。
中村 そうですけど。わざわざ・・・。

   トシ子、しばらく看板を見ている。

トシ子 チャンバラは。
中村 チャンバラ?ここでは。
トシ子 じゃあ、アクション映画。
中村 ・・・。TOHOシネマズかな。でも休みですよ。映画館はどこも。
トシ子 そう(残念そう)。
中村 映画でしたら、お家でTSUTAYAで借りて。あ、TSUTAYAなければGEOとか。あ、街中にはないか。例えば、スマホでも観れますよ。ほら。(スマホをいじりだす。近寄ろうとするが)おっと。二メートル離れますんで。ソーシャルディスタンス。アンダスタン?

   中村、二メートル離れ、スマホ画面を見せる。
   トシ子からはどう考えても見えない。

中村 ちょっと小さいかなあ。やっぱりアクション映画は映画館のスクリーンの方がいいか。
トシ子 見えるよ。蠅と蚊の戦いかね?
中村 違います。スパイダーマンです。蜘蛛です。
トシ子 映画はいいよ。あきらめるよ。ありがとうね。いろいろと。
中村 いえ、私は何も。

   中村、お辞儀をして、去る。

トシ子 さて。あ~、苦しい。

   トシ子、マスクを外す。

トシ子 捕まってもいい。

   マスクをした警察官がやってくる。

警察官 おばあちゃん。
トシ子 はいね。
警察官 どこから来たの?
トシ子 ああ。ニューヨーク。
警察官 ニューヨーク?アメリカの?
トシ子 ハリウッドでね。
警察官 映画の都?
トシ子 衣装をつくってるの。
警察官 え?ハリウッド映画の?
トシ子 そうよ。
警察官 エマ・ワトソンとか?(上演時の流行りの女優の名前)
トシ子 ヴィヴィアン・リーってご存じよね。
警察官 いや・・・。
トシ子 『風と共に去りぬ』。
警察官 観たことはないけど、題名は・・・。
トシ子 ヴィヴィアン・リーがきれいでねえ。その映画観て決めたの。この人たちのお洋服をつくる人になるって。
警察官 はあ。え~と。おばあちゃん、お名前教えてくれます?
トシ子 だから、ヴィヴィアン・リー。
N それまで鍛冶町通りと田町通りを結ぶ、S字型に曲がった三メートル足らずの路地が広げられ、有楽街となった。有楽街という名前は、映画館が立ち並ぶ東京の有楽町から来ている。「楽しめる場所」という思いを込めて。浜松のまちなかが焼け野原になって、太平洋戦争が終わり、七年の月日が過ぎた一九五二年のことである。

   警察官とトシ子はいなくなる。


(第2章に続く)





 

有楽街で演劇をつくる その6

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その6
         路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員 寺田景一


有楽街が開通したのは1952年のこと。
街中の商店街の中で最も新しい。
それまでS字型に曲がっていた三メートル程の路地が、鍛冶町通りと田町通りを結ぶ有楽街となった。

映画館が立ち並ぶ東京の有楽町が名付けの由来で、“楽しめる場所”という思いが込められた。
松竹座という映画館があり、そして有楽座が出来た。

太平洋戦争の浜松空襲による焼け野原から、立ち直る最中である。
映画館は有楽街だけでなく、浜松街中にたくさん出来ていく。

映画を観るためにこぞって街中へ出掛けたことだろう。
観た後には、食事をしたり、買い物をしたりしたことだろう。

それは誰と来るのだろう。
子供ならお父さんお母さんと。
働き始めた人は新しい友人と。
初めてのデートに向かう者たちもいるだろう。

映画の形も時と共に変わる。
映画は映画館のみで観るものではなくなる。
テレビで放送されたり、ビデオやDVDに複製され、販売・レンタルされたり、インターネットで配信されたり。

一つの施設に複数のスクリーンが集められたシネコンが出来、一つ一つ存在していた街の映画館が消えて行った。
そうして、街も変わる。
人も変わる。

5月31日に予定していた路上演劇祭は期限を決めない延期となった。
「有楽街で演劇をつくる」ワークショップも一旦休止となった。
しかしながら、演劇づくりは継続する。
路上演劇祭での上演のために。

(浜松百撰6月1日発行号より転載)


※ほぼここに書いたような内容の戯曲「PEOPLE」を5月のはじめに書いた。
400字詰め原稿用紙38枚。
1枚当たり1分と計算すると、38分かかる。

もしも路上演劇祭で上演するとなれば、
1組の上演時間の基本的な上限30分を越えることになる。

「PEOPLE」というタイトルのみを決め、エントリーしていた。
とは言え、本来はワークショップを経て出来上がるべきもので、
書いたのは、あくまでも僕の個人的なことである。
ゴールデンウイークをはさみ、
新型コロナによる在宅率の高さもあったが、
それまでの準備の果て書いたのだと思う。

せっかく書いたので、誰かに見せたくなった。
上演が前提でない戯曲はただただPCの中に眠ることになる。

5月31日に有楽街に希望者がやってくることになっていた。
内々であるが事前に告知し、来た人に声をかけて、
リーディングをさせてもらった。

有楽街をテーマにした「PEOPLE」。
路上演劇祭Japan in 浜松2020は5月31日には開催されなかったが、
何となくやりすごせた気持ちである。
個人的に。




 

有楽街で演劇をつくる その5

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その5
          路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員 寺田景一


新型コロナウイルスが世界中を揺るがしている。
年が明けた時の晴れやかな気持ちとの裏腹さに唖然とするしかない。
主体的に生きていた筈の人間が如何に周りの影響の中で生きているのか実感せざるを得ない日々である。

そんな葛藤のさなか、3月20日、有楽街で演劇をつくるためのワークショップ1日目が行われた。
演劇だけでなく各イベントが取りやめとなっている。
公演は対外的な理由で出来ないこともある。
但し、僕はどんな状況でも演劇は作り続けられるものであると思っている。
ものづくりの根源的な意味合いで。
勿論やり方は臨機応変に変えながら。

第一通り駅の北側の空いた場所で、体を動かす為のいくつかのメニューを行った。
そして、有楽街に移動し、参加者各自で歩き、気になるものを見つける作業を行った。
事前に有楽街の古い住宅地図の複写を渡してあったので、現在の店と比較して歩く者もいた。
店に飛び込み店主に話を聞く者もいた。
ぼんやり歩いた者もいるかもしれない。

その後、あらかじめ依頼していた商店主の方から、有楽街についての話をお聞きした。
有楽街は浜松まちなかの商店街の中では一番新しいそうだ。
様々興味深い話を伺った。
次回、4月4日は各自見つけたものを披露し合い、作品作りに向けてテーマを探る。
周りの影響を受けながら。

(浜松百撰5月1日発行号より)



※写真は第一通り駅北側でのワークショップの様子。
 即興芝居しています。




 

有楽街で演劇をつくる その4

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その4
        路上演劇祭Japan in 浜松実行委員 寺田景一


この号が発行される時は、すでに3月20日に初日を迎える「有楽街で演劇を作る」ワークショップが始まっている。
執筆している今、どれだけの人数が初日から参加するか不明である。

今までも僕は路上演劇祭において、サザンクロス商店街で行った「砂山劇場」等、参加者を募り、街を知ることから演劇作品をつくる試みを行ってきたが、いつも募集に苦労する。

なぜだろうか?
思いついたのは、人は自分を中心に考え、やりたいことをやるのだなということ。
ワークショップなら、好きなこと、興味があること、身に着けたい事に参加する。

それに引き換え「有楽街で演劇をつくる」と言われても、「有楽街?あんま関係ないし」とか「演劇つくる?台本ない?難しそう」など、自分との関係を遠ざける理由が続々出てくるのではないか。

実を言うと、僕自身も有楽街にとりわけ思い入れがあるわけではない。
でも知らないことが多いから、面白いと思うのだ。
何より、参加する人のことも全く知らない。
唯一の共通点は「有楽街」。

ワークショップのタイトルは「街を知る 自分を知る」と言う。
演劇をつくる作業の中で、予測できない様々な事を学ぶことが出来ると期待している。
もちろん途中からの参加も可能。
5月31日の演劇祭当日が募集の締め切りとも言える。

(浜松百撰4月1日発行号より転載)



※写真は第1回目のワークショップでお話をお聞きした判子屋の寛永堂さんと通りがかりのチャリの高校生。




 

有楽街で演劇をつくる その3

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その3
            路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員 寺田景一


「有楽街で演劇をつくる」ワークショップのチラシが出来た。
3月20日の第1回から始まり7回の行程が組まれている。
 
第1回は「オリエンテーションとはじめての街歩き」。
これからどのようなことをするのか説明をしたのち、有楽街に行って、商店街の人などに話を聞く。
 
第2回は「街歩きを通して、見つけてきたものを披露しあい、作品作りのテーマを決める」。
聞いた話、見えた景色、聴こえた音、感じた風など、それぞれが見つけたカケラを披露しあい、作品作りの足掛かりを探っていく。
 
第3回は「ふたたび話を聞きに行く。2度目の街歩き」。
第2回の話し合いで気になったことをより探るために、もう一度有楽街に話を聞きに行く。
 
第4回と第5回は「作品作り」。
限られた時間での作業。
無理なく楽しく進めていきたい。

第6回は路上演劇祭前日。
有楽街で「上演に向けたリハーサル」を行い、第7回の5月31日、本番で上演。
参加者募集中!!
詳細・お申込みは路上演劇祭ブログにて。
http://rojo-hamamatsu.blogspot.jp/

※ワークショップの募集は終了しております。

(浜松百撰3月1日発行号より転載)





 

有楽街で演劇をつくる その2

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その2
          路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員 寺田景一

12月8日に行った有楽街の《街歩き》は、ヴァイオリンを携えての参加者がいた。
昨年、路上演劇祭に初めて出演した竹嶋賢一さんである。
普段は東京で暮らしているが、ご実家のお母様の元に週末帰って来ている。

高台協働センターで「子供の為の現代音楽研究会」という看板を掲げて活動されていた。
路上演劇祭の代表である里見のぞみさんが看板を見たことから、関りを持つようになった。

竹嶋さんは音楽をやっている方だが、《音楽》と《演劇》の境界線をそんなに意識されていないと思う。
たぶん。
僕も演劇の《経験者》と《未経験者》の境界線をそんなに意識していない。
と言っても、もちろん技術と言うものはあるので、積み上げたものを批判するものではない。

僕はどこかで《演劇》というものは、例外なく誰とでも一緒に出来るものだと思っている。
また、無料で見物できる路上演劇祭は、それが実現し得る場所だと考えている。
《街歩き》のこの日、竹嶋さんと里見さんはヴァイオリンを弾きながら有楽街を歩いた。
僕は勇気がなくて、促されたが弾かなかった。

(浜松百撰 2月1日発行号より転載)






 

有楽街で演劇をつくる その1

カテゴリー │路上演劇祭

有楽街で演劇をつくる その1
         路上演劇祭Japan in 浜松 実行委員 寺田景一



《街歩き》は2度目である。
前回の《街歩き》後の話し合いで、有楽街に焦点を定め、もう一度歩いてみようということになったのだ。
10月26日15時半に有楽街の中ほどにある浜松松竹ビル前に、私たちは集まった。

路上演劇祭Japan in 浜松は毎年、街中を歩くことから始める。
目的は会場探し。
今までもサザンクロス、旧松菱跡、モール街、浜松駅北口前など、様々な場所で開催してきた。

有楽街では2012年5月にも開催した。
わずか7年前とも言えるかもしれないが、景色も変わる。
人も変わる。
もちろん変わらないものもたくさんある。

前回お世話になったはんこ屋さんや老舗の自転車さんを訪ねた。
立ち話であるがお話を聞いた。
そして、ふさわしい演技スペースがないか見て回った。

私たち実行委員は、次回の路上演劇祭を有楽街で開催することを決めた。
開催予定は2020年5月31日の日曜日。

そして、ひとつの試みをしようとしている。
有楽街をテーマに演劇祭で上演する作品作りをしようというのである。
参加者募集中!!




以上は、浜松百撰1月号からの転載記事。
発行日は2020年1月1日。
路上演劇祭Japan in 浜松2020を有楽街で開催するにあたり、
「有楽街で演劇をつくる」様子をコラムで6回に渡り、紹介させていただくことになった。

ところが、途中で新型コロナウイルスの影響で、
開催の期限を決めない延期が決まり、
「有楽街で演劇をつくる」計画は頓挫する。

にも拘わらず、当初予定の6月号まで書かせていただいた。
締め切りが発行の1か月前なのでタイムラグに戸惑ったが、
これはこれで、あえて面白がって書いた。

目的を達することができなかったコラムの結末は?
浜松百撰さんの了承を得たので、こちらでも紹介させていただく。

ちなみに浜松百撰とは、
『静岡県浜松市のタウン誌。昭和33年に創刊され、
銀座百選に次ぐ日本で二番目に歴史のある手帳サイズの情報誌、
です。地元浜松市民や仕事で浜松を離れた方などにも愛読されています』
~WEBサイトのディスクリプション(説明書き)より

浜松百撰WEBサイト
http://hamamatsu100sen.com/



 

5月31日は本来路上演劇祭Japan in 浜松2020の開催日だった

カテゴリー │路上演劇祭

5月31日は本来路上演劇祭Japan in 浜松2020の開催日であった。
この時期に行われるイベントものは軒並み中止または延期となっている。
もちろん路上演劇祭も例外ではない。

浜松まちなかの商店街である有楽街で行われる予定だったが、
4月のはじめ頃、実行委員会で話し合いにより延期と決めた。
延期と決めたが、この時期、開催の時期を具体的に決めれるものでもない。
東京オリンピックでもあるまいし。

例えば、今年の秋に延期にするとしても
次回の来年5月終わりか6月初めの例年の開催時期がやってくる。
実際のところ、延期とはいえ、来年の同じような時期へ延期する見込みが高いだろう。
中止と何が違うのだ。
それでも、中止という言葉は使わなかった。
あくまでも期限を決めない延期である。
いつでもやるぞ、という意気込みである。
そして、場所は同じ有楽街で行われるであろう。

5月31日は路上演劇祭の開催日ではない。
でも、希望者は自発的に有楽街にやってきて、思い思いの行動をする日としていた。
非常事態宣言は全国で解除されていたが
都道府県をまたいでの移動はご注意くださいなどの行動指針が出されている。

東京では
日本橋から東海道を東から有楽街がある西に向かい歩く者がいた。

先ずは東海道の始まり「日本橋」 8時56分


そして、江戸時代のお見送りポイント「品川」 10時39分


そして、今や海岸ははるか先に「大森海岸」 11時42分


この日の終着点、川を渡れば神奈川県の「多摩川」
県境は〝越すに越されぬ大井川”  13時6分




浜松では別の者がバトンを受け、有楽街へ車で向かう。
「有楽街へ向け出発」 14時13分


「雨の有楽街」 14時45分


「竹嶋さん」 14時50分


こちらは別写真


「傘をさす女」 15時1分


「ハーモニカを吹く男」 15時5分


「傘をさす女2」 15時14分


「PEOPLE読み合わせ」 15時51分



京都からは映画館がある賑やかな通りからの報告。新京極という文字がある。



最後に2020幻路上演劇祭 YouTube動画

https://youtu.be/9opTM1MimFE


いずれも参加メンバーからの路上演劇祭のメーリングリスト間の報告を転載させていただいた。
僕自身は何も記録しなかったが、
やはり多くの人に伝えたいと思う。
幻だったにせよ。
6月27日17時から実行委員会が開かれる。
ああ、続いているのだなあ。


傘をさす女の傘(使用前)


(使用後) ※貼り付けられた新聞紙は新型コロナ関連の記事だった。