穂の国とよはし芸術劇場PLATでアル☆カンパニー・ラボ「POPPY!!!」を観た

カテゴリー │演劇

12月4日(土)14時30分~

アル☆カンパニーは俳優の平田満と井上加奈子が
劇団という形をとらず、毎回劇作家、演出家、俳優が、創造的にコミュニケーションを重ね、
人間主体の演劇を目指す企画プロデュース共同体。
2005年に設立された。
組んだ劇作家、演出家は
平田俊子、青木豪、蓬莱竜太、前田司郎、松田正隆、田村孝裕、三浦大輔、桑原裕子ら。

そして、コロナによるリーディングとなった昨年に続き、
今回は桃尻犬の野田慈伸。
(作・演出でメンバーは野田さんひとり)

今回公演の主催名はアル☆カンパニー・ラボという。
若手クリエーターとコラボする新しい機軸ということだ。

平田さんと井上さんは
つかこうへいが1974年に設立した
劇団「つかこうへい事務所」の旗揚げに共に参加し、
俳優としてつか作品を演じてきた。
おふたりは結婚し、井上さんは1980年の「飛龍伝80」を最後に俳優業を引退し、
主婦業と子育てに専念。
そして、1982年劇団「つかこうへい事務所」は解散。

その後、20年以上の時を経て、
ご夫婦でアル☆カンパニーを設立。
そして井上さんも舞台に立つ。
僕はこれはとてもドラマティックなことだと思う。

そして時を経て、若手と組もうという暴挙、あ、いや、挑戦!!
おそらくその姿勢は
演劇を始めたころ、
つまり、早稲田大学の学生劇団「劇団暫(しばらく)」で
つかこうへいらと出会ったころから変わらないに違いない。

「POPPY!!!」は3組の男女、計6人が登場する。
離婚するかもしれないという花屋の夫婦、
結婚するかしないか悩むカップル、
そして、平田と井上が演じるのは
40年ぶりに会った元恋人同士。

浮気、借金など諸々の理由で、
2年間猶予を置くことを平田演じる譲二は提案。
ただし、2年後会う約束の場所に
譲二は忘れていて、関係はそれっきりに。

井上演じるみどりはその後結婚し、
生まれた娘が
譲二が働く花屋の出入り業者、40歳手前の春樹の
恋人である樹里。
この二人が、上記の
「結婚するかしないか悩むカップル」。

40年ぶりに再会しても
時間を取り戻すことは出来ない。
みどりが、譲二のことを大好きだったと娘に言うが、
それは切なさを増すだけ。

離婚するかもしれない2人も
若いとも言えないが結婚するかしないか悩む2人も
これからその関係は理想通り変えることが出来る。
そんな可能性を持つ。

ただ、40年ぶりに会う好き同士だった2人は
その関係は大きく変えることは出来ない。
夫から妻を奪うことや
娘から母を奪うという選択肢もあるのかもしれない。

ただ、この物語ではそんな展開は求められていない。
唯一出来るとしたら、時間をさかのぼることぐらいだが、
そんなことをしても仕方がないことは誰でも知っている。

そこで、譲二は「今できること」を行動に移す。
それはヒマラヤに花をとりに行くということで、
六十五歳で登山経験などありそうにないのだが、
彼にとっては唯一出来ることと思い込んでしまっている。

その花がケシの花、
つまりタイトルでもあるPOPPY。
調べてみたらPOPPYとは
スラング的におじいちゃんの意味でも使われるそうだ。
その意味も含め作者がタイトルをつけたかは不明。

劇中、つか芝居を思い出す
平田や井上のテンション高めの演技場面も飛び出す。
これはひとつのオマージュであり、
観客へのサービスでもあるだろうが、
そういう遊び心も
世代が異なるユニットを気持ちよく成り立たせる
表れだろう。
俳優たちがとても心地よさそうに演じていた。
これは何よりなことだと思う。

穂の国とよはし芸術劇場PLATでアル☆カンパニー・ラボ「POPPY!!!」を観た





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