浜松市春野文化センターで劇団限界集落「オリジナルミュージカル庚申堂~僕は、本当の僕に会いに行く~」を観た。

カテゴリー │演劇

9月7日(土)14時~

劇団限界集落とは、インパクトがある名をつけたものだ。
先ず、その劇団名に目をひかれる。
限界集落とは、地域の人口の50%以上が65歳以上の集落のことを言う。

過疎と言う言葉があるが、
限界集落という概念の提唱者は現状を伝えるには実態とずれていると、刺激性のある言葉を使ったそうである。
今が限界。
この先は・・・。

代表であり、作品の脚本・演出 松井茉未さんはかつてタカラジェンヌを目指したが、果たせず、音楽大学に入学し声楽を学ぶ。
その後、地元に戻り、就職、結婚、出産。
母校の小学校から依頼され、音楽を教えることになり、こどもたちと関わるようになる。

ミュージカルのシーンを練習で行う内、見ていた大人たちからもやってみたいという声が上がり、
「地元でミュージカルができるかもしれない」とひらめくに至る。
(以上、劇団noteより)

メンバーによる記事。
若い頃から演劇をやってみたいと思っていた70歳代の男性が、
どこか演劇集団を知っているか松井さんに聞いてみた所、
ちょうど「大人のミュージカルを地元で作りたかった」という思いと合致した。
集団が始まるときはこういうものだ。
ひとりがふたりになり、それが広がっていく。

初公演はディズニーや劇団四季でもおなじみ「ライオンキング」。
でもこの演目を選ぶとき、劇団の特徴があらわれる。
つまり、動物の着ぐるみ、衣装はおまかせあれ!
メンバーには布の事や縫物が得意な人が控えているのだ。
僕だったら、ライオンやミーアキャットやイボイノシシどうしようと尻込みしてしまう。

既成の題材2作を経て、3作目でオリジナル作品「庚申堂」を作るに至る。

庚申とは、当日配られたプログラムによると暦の上で六十日に一度めぐってくる庚(かのえ)申(さる)の日。
夜、眠ってしまうと体から三戸という虫が抜け出し、
天帝にその人が行った悪行を告げ口に行く言う。
そのため、庚申の晩は、仲間で集まり、眠らず過ごすという風習がある。
全国に庚申信仰に関連する寺社がある。

そんな庚申信仰を題材に描く、ひとりの少年、真幸の成長物語。
母を亡くし、父と新しい土地へ引っ越してくるが、転校先ではガキ大将たちにいじめられ、なじめない。
ガキ大将がかわいがっている小鳥を傷つけてしまったことで、行き場がなく、やってきたのが町の庚申堂。
不吉なことを告げる管理人の老婆にいざなわれ、中に入り込むと出会う庚申の世界。
ファンタジー。

ここでも、ライオンキングどんとこいの制作力が発揮される。
青塗りの青面金剛童子、見ざる聞かざる言わざるの三猿、熊、ウルフ、青ぎつね、ヤマセミ、お亀、シカジカ先生。
ファンタジー世界の住人たちを、俳優が個性たっぷりに演じる。
配布された登場人物の紹介文にはそれぞれの役の立場や性格が書かれていて、
それは演じる上で助けになったことだろう。

真幸が、タイトル副題の~僕は、本当の僕に会いに行く~のきっかけになったのが、
彼の歌。
歌えなかった歌を歌うことで、窮地を脱し、出会いと別れを体験し、いま生きる場所で新たな友を獲得する。
この先長い新しいステージに立つのだ。

それは、代表の松井さんの思いとも重なる。
もちろん劇団限界集落の思いとも。

※浜松市のHPで、人口分布(R6.4.1)を調べてみた。
浜松全体(78万6792人)で0~14歳 12.03%、15~64歳 59.19%、65歳~28.78%
春野町を含む天竜区(2万5296人) 0~14歳 7.20%、15~64歳 45.42%、65歳~ 47.38%(女性は50.86%つまり限界集落)
天竜区は浜松市域の61%を占め、91%が森林だということだ。
春野町文化センターまで浜松駅から46キロ、車で約1時間。
遠いのか、近いのか。

浜松市春野文化センターで劇団限界集落「オリジナルミュージカル庚申堂~僕は、本当の僕に会いに行く~」を観た。



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