クリエート浜松でアルテ・エ・サルーテ劇団「マラー/サド」を観た

カテゴリー │演劇

10月11日(木)18時15分~

アルテ・エ・サルーテ劇団はイタリアで精神保健局に所属する精神障碍者による
プロフェッショナルな劇団。
ボローニャ市立劇場と協同で制作された作品が
世界精神保健デー普及啓発事業 イタリア精神保健法制定40周年記念プログラムの一環で、
東京と浜松で上演される。

「マラー/サド」は正式には
「マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者によって演じられたジャン・ポール・マラーの迫害と暗殺」という。
あまりに長いので通称「マラー/サド」と呼ばれているそうだ。

ペーター・ヴァイスによる戯曲。
1964年に初演され、
1967年にはピーター・ブルックにより映画化された。

マルキ・ド・サドはフランス革命期の貴族であり、作家であるが、
自由と肉体的快楽を求めるあまり、
暴行や乱交等で、
74年の生涯のうち、
刑務所や精神病院で
都合6か所、合計30年強過ごしている。

小説はほとんどが獄中で書かれたもので、
サディズムという言葉は、
彼の名に由来する。

対して、ジャン=ポール・マラーは
フランス革命時の革命指導者であり、医師である。

シャラントン精神病院で、患者さんたちの治療のために
病院内で演劇が演じられるという劇中劇の設定。
マラーがシャルロッテという女性に刺殺されたという史実を元に
マラーの生涯をフィクショナルに描く。

精神病院の檻の外では
看護者たちが演劇の様子を監視していて、
ともすれば演技が行き過ぎるのをストップをかけて是正させる。

フランス革命以前の権力者による圧政の元、
庶民は貧しく、不自由を強いられている。
当時の庶民の姿は、精神障碍者たちの現実の姿と重なる。
社会の差別や偏見と闘う。
しかし、それは閉ざされた檻の中。
そしてそれは監視され、統制されている。

このような矛盾に満ちた状況の中、
役者たちはフィクションを演じる。
完全なる自由を求め、
声を上げ、歌い、団結する。
それは演じる
自らも精神病を患っている役者たち自身と重なる。
リアリティをもって、
観客たちに迫ってくる。

アフタートークで演出者により語られていたが、
これは患者たちのためのセラピーではないという。
役者を選ぶ基準は才能であり、
プロフェッショナルとして
成り立たせているという。

イタリアは世界で初めて精神病院をなくした国である。
非人間的な拘束よりも
人間的な自由を選択し、
社会の中で共に生きようとしたのである。

観客たちは檻の外で観ているが、
決して檻の外にいない。
ともすると
こちら側が檻の中かもしれない。

最後に。
これがまた楽しい音楽劇で繰り広げられる。

クリエート浜松でアルテ・エ・サルーテ劇団「マラー/サド」を観た


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