穂の国とよはし芸術劇場PLATアートスペースで高校生と創る演劇「Yに浮かぶ」を観た

カテゴリー │演劇

11月7日(土)18時~

チラシにはこのようなキャッチコピーがあった。

傘を、捨てた。
雨の音が響いた。
わたしは、雨になった。

舞台は白砂が円形に敷き詰められていて、
周りの淵は並べた石で覆われている。

雨があがり、干上がった小さな砂漠に見えた。
いや、高校生たちを自由に遊ばせる公園の砂場だったかもしれない。

そこにひとりずつ登場し
(アフタートークによると出演者のひとりの指示で登場していたそうだ)、
砂漠は教室となったり、Y市という架空の市のどこかになる。
と言ってもY市と言うのは、劇場がある豊橋市と言うのは明白で、
豊橋市内で伝わる4つの民話が作品のモチーフとして使われている。

地域の老人、まゆじいから昔話を聞く機会があったようで、
それが普段の高校生たちの生活に静かに浸透していく。
高校生たちは高校生なりに感じていることがあり、
物質の成り立ちについて思いをはせる人もいれば、
生物の中の人間の割合を植物の割合と換算して、
何て人間は少ないんだろうと地球上の生物分布を考える人もいる。
クラスに好きな人がいる人もいれば、
好かれていることを知りながらさめている人もいる。
幽霊を見ることが出来る人もいれば
見ることが出来ない人は大勢いたりする。

そんな高校生たちのありふれた日常に
民話が浸透していく。
SFのように当時の人が都合よく現れるのではない。
ここに登場する豊橋市に伝わる4つの民話は以下。
「傾城塚」
「山の背比べ」
「お弓橋」
「十三本塚悲話」

堤防工事のために人柱となった遊女、
お互いにどちらが高いか争う山同士、
橋を隔てて報われぬ恋に悩み死んだ女、
戦国時代、磔にされ、大槍で串刺しにされた十三人の人質、
時代の異なる過去の人々や自然物である山に対し、
現代の高校生たちの感受性を通過した反応が
演技となって現れる。

高校生とプロの演劇人が共に演劇をつくり公演する「高校生と創る演劇」は
PLATが2013年4月30日に出来て2年目から行われているそうだ。
今年度はオーディションにより選ばれた高校生出演者と
高校生スタッフが、
テキスト作成と演出を担当した
mizhenという演劇ユニットの藤原佳奈さんらとともに創る。

mizhenは他にも佐藤幸子さんと佐藤蕗子さんがメンバーとしていて、
このお二人も演出助手として参加されている。
PLATの広報誌にインタビュー記事があり、
その過程の一端がうかがえる。
そのチームによる手厚いケアが
集団を支えていただろうことは容易に想像できる。

高校生の公演は多くが無料公演ではないだろうか。
こちらは有料公演なのだが、
それはひとつの責任が生まれる。

しかしそれは高校生たちのみが負うものではない。
劇場がバックアップし、
プロの照明や美術や音響がつく。
商業演劇は観客のためにあるのかもしれないが、
今回の演劇の主体は高校生である。
高校生がどう感じ、どう考え、どう表現したか。
そのためにこの公演がある。
それを観客は見届ける。

そのような創り方をした公演だったと思う。
おそらく、砂場の舞台も
砂場に高校生たちの素足を触れさせたかったのだと思う。

最後にスタッフとして参加した高校生たちのことについて触れたい。
アフタートークに高校生スタッフも登壇し、話をされた。
スタッフ抜きに公演は成り立たないことを再確認した。

穂の国とよはし芸術劇場PLATアートスペースで高校生と創る演劇「Yに浮かぶ」を観た


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