穂の国とよはし芸術劇場PLATでイキウメ「外の道」を観た

カテゴリー │演劇

7月3日(土)13時~

イキウメとは、作・演出の前川和大さんを主宰とする劇団。
2003年に旗揚げされ、話題作を上演し続けているが、
イキウメとしての豊橋での上演は初めてだという。

作・演出作品は何本か上演されている。
僕も子供も対象にした毎年夏休みの時期にやる公演を観た。

今回の作品は本来昨年2020年に上演されるはずだったが、
やはりコロナの影響で中止となり、いくつかの過程を経て、
今年の上演となった。

その過程の中で、台本も書き換えられたようだ。
東京での会場であった世田谷パブリックシアターのHPの
公演案内に掲載されている2020年のストーリーラインよりとある
説明文を読むと、登場人物などはダブるが内容が異なるのがわかる。
1本につながっていた話を2本にエピソードを分けた感じだ。

観終わって、ずいぶん哲学的な話だったな、と思った。
話が終わり、時間を経た後に、そういえば、哲学的な話だったかも、とうっすら気が付く、
というより、言いたいことを直接的に訴えかけようとしている気がしたのだ。

これは望まない1年の時を経ざるを得なかった影響かもしれないと思った。
1年は、長いと取るか短いと取るか、
1年は、考えてみればいい経験と取るか取り戻すことが出来ないロスと取るか。

作者は1年の遅れを取り戻すかのように、結論を急がせたのではないだろうか。

偶然同じ町に住んでいることを知った過去に同級生だった(小中だったかなあ?高校だったかなあ?)
男(寺泊)と女(山鳥)が、喫茶店で会う。
とはいえ、お互いに社交的でない性格で、共通する話題はすぐに尽きてしまう。
そこで、互いに近頃経験した出来事を語り始める。
演劇を構成するのはその回想になる。

舞台には椅子が何脚か(数は忘れた)距離を置いて並べられている。
背後は向こう側(外)が見えないすりガラスで覆われていて、扉があり、閉じた部屋であるが
そこそこの広さはある。

登場人物たちは順番に舞台に登場し、その後は引っ込むことはなく、
役柄以外の役割も兼任しながら、2人の回想を再現する。

寺泊は、喫茶店店主の手品の種明かしから
世の中のからくりを全て理解し、
今までの価値観が反転していき、
宅配会社の社員として長年積み上げてきた宅配の仕事を
「誤配は最高」という価値観に行きつき、結果仕事を失う。

山鳥は、“無”と書かれた荷物が届くことから
“無”が世界を食い尽くすという抽象的な世界が、現実に起き、
産んだ覚えのない子供が「お母さん」と言って現れたり、
母親が過去を失ったかのように「17歳だ」と言って現れたりする。

それらは非現実的な話が、
実際に送る生活の中の現実と符合し、
現実と非現実の狭間をすり替わる。
ここではそれを夢あるお伽話としては描かない。
実際的には実損を被ったりして、不安と絶望に陥っていく。

2人を結ぶ共通点がまた世間的な内容だ。
昔同級生だった時の思い出話ならお伽話にもなっただろうが、
寺泊の妻が通うスポーツクラブのインストラクターである
山鳥の弟と不倫の関係にあるのではないかという。

ありえない世界が
決して唐突に現れるのでなく、
実は理由があり、例えば人の心の問題であるとか
そういうことから、別の世界が現れると提示している。
それをタイトルから言えば、「外の道」という。

「外の道」というタイトルから、外道という言葉を連想した。
人の道から外れた者、不良、半端者、アウトロー・・・。

調べてみたら、
外道とは仏教の言葉で、
反対の意味の、内道とは仏教のこと。
仏教以外の教えは、外道という。
つまり世の中に内道と外道しかない。

仏教から言えば、外道と呼ばれるが、
仏教以外から言えば、それは内道と言える。
立場が違えば、まったく逆の呼び名となる。

外の道の反対が内の道なら
内の道にとっての外の道が
外の道にとっては内の道。

どちらの道が正しいことなのかは本来わからない。
また、それがどちらが幸せでどちらが不幸なことなのかも
本来わからない。
それは正しいことや幸せを判断したり、作るのは自分次第だともいえる。

時折、不穏な音が空から鳴る。
閉じ込められた人々は一斉にふりかえり、その方向を
見えないすりガラスから見る。
観客たちも思わず見る。
数度、劇場内は意図的に時間の長い完全暗転(暗闇)となる。
これらは皆に当てはまることなのだという
わかりやすいメッセージ。

穂の国とよはし芸術劇場PLATでイキウメ「外の道」を観た



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