クリエート浜松でMUNA-POCKET COFFEEHOUSE「忍者たち。DX」を観た

カテゴリー │演劇

11月21日(日) 
キャストA:14時~ 
キャストB:17時~

「忍者たち。DX」は5月のGW中に静岡市で行われた
街中で演劇やダンスが繰り広げられる、
ストレンジ・シード静岡で演じられた作品「忍者たち。」を元にしている。
僕も5月4日に行き、計8本観た。

出演者はマスク着用組としない組に分かれていた。
他の演劇を観た時、
マスク着用の演技を観るのは無理があるなあと感じたこともあったが、
この日は、セリフがあるところは非着用、
セリフより動きで見せるところは着用、
という具合で、線引きはわかりやすかったように思う。

ところが「忍者たち。」はセリフが多用されているにもかかわらず、
マスク着用だった。
ただし、登場人物は皆忍者なので、口を覆うことは理にかなっている。
たとえコロナ禍でなかったとしてもマスク着用がふさわしい。
ああ、これはきっと作戦だ。
コロナ禍であることさえ逆手に取った。

静岡市民文化会館前駐輪場が会場であったが、
隣接する駿府城公園内でも他の上演会場となっていたので、
徳川家康に会うことを目標に攻め入る忍者を描くこの作品は
そういう意味でもふさわしい題材だったかもしれない。

場所や社会状況を見極め、作品は出来上がる。
これは劇団の創作における「意思」だろう。
そして、マスク着用はまったく気にならなかった。
比較的近くから観ることができるのも大きな理由だったかもしれないが、
セリフの内容や話し方もマスク着用仕様になっていたように思う。

そして、この日行われた、はままつ演劇フェスティバルにおける
クリエート浜松ホールでの公演。
「忍者たち。DX」と、バージョンアップの屋内上演。

MUNA-POCKET COFFEEHOUSE(以後、通称のムナポケ)の演劇公演の特徴のひとつにダブルキャストであることがあげられる。
ストレンジシードもダブルキャストだった。
どれくらいこれが珍しいかというと、
少なくても今までストレンジシードでダブルキャストは他に観たことがない。
(僕が観なかっただけであるかもしれないが)

中には両方の公演を観た人もいたようだ。
僕は異なる会場で同時進行で行われ、
何日か通わないと全部を観ることができないイベントなので、
時間にあったキャストバージョンを観て、
他に観るべきものはないかと、別の会場を探す。

実は今回、初めてA、B両方の公演を観た。
今までのホール公演もどちらかを選択していた。
主に日程的な判断基準で。
これは僕の「意思」でもあったが、
やはりもう一方はどうだったんだろう?
という思いは残る。

初めて両方観て気が付いたこと。
これはよくあるダブルキャストとは違うなあ。

ロングランミュージカルなどはダブルキャストを導入する。
先日、舞台化が発表された「千と千尋の神隠し」も
千尋役の上白石萌音と橋本環奈などダブルキャストであった。

あるサイトにダブルキャストの理由として
・ロングラン上演のため  ・キャストが降板しても対応できる
・宣伝効果になる  ・リピーターが増える
とあげられていた。

ただし、これらはすべて興行としての
営業的な理由である。

ムナポケの場合、それぞれのキャストの周辺のお客さんが
来てくれるということはあるだろうが、
両方観て、
ダブルキャストを採用する理由は
そういうことだけじゃないかもな、と思った。

人が好い忍者たちの里に織田軍が攻め入り、
敵将の徳川家康の首を取るのではなく揉むために
各自が持つ忍法を武器に猛攻撃をかわしていくが、
仲間は次々と死んでいく話。

ここでの見どころは、
忍法による戦い方と
そして、死に方だ。

忍法は名前が長くてセンスが悪いのでどうにかしてくれ、
という前振りがある。
直す前に戦いは始まってしまう。
そして、忍法を繰り出す際に忍法の名を叫ぶ。
まるで、子供の時のヒーローごっこの時のように。

漫画やテレビのヒーローは得意技の名を叫ぶ。
仮面ライダーが「ライダーキック」というのと
伊賀の影丸で、忍法名を言ったかなあ程度しか思いつかなかったので、
「攻撃の名前を言う」で検索してみた。
キャプテン翼、ワンピース、宇宙戦艦ヤマト(「波動砲!」)、デビルマン、マジンガーZ、
ドラゴンボール、ハリーポッター・・・。
また、「昇龍拳!」などゲームでは一般的かも。
あと、モー娘の「セクシービーム」
プロレスなんかは実況アナが技の名を叫んで補填する。
鬼滅は心の声で言ってるか。

長くてセンスの悪い忍法名の言いこなし方が
役者のひとつの見せ所になる。
敵とどう戦い、
味方とどう共闘し、
挙句敗れ、
死んでいく。

脚本にはその見せ場がセットで用意され、
俳優は自分の場面として舞台で演じる。
これは、例えるなら、
大喜利やコントなど、
お笑い芸人が挑む勝負の場と似ている。

お笑い芸人は総じて、
声が大きくテンションが高い。
それはその場での観客や
共演者との相関関係から生じる。

笑いをとるために
1歩出る。
またあえて1歩引くこともあるだろう。

そんな駆け引きが絶えず
繰り広げられる。
それは稽古場から発生している。

俳優たちは
住む町も違い、仕事や生活の環境も違うだろう。
稽古をA、Bを完全に分けて稽古をしているかどうかわからないが、
全員揃わない場合もあるだろうし、
想像するに、重なって稽古をする時もあると思う。

その現場で、エチュードが試され、新しいセリフや動きが生まれたりする。
別バージョンのキャスト同士、
互いの演技をみて、刺激を受けたりする。

例えば、別バージョンの俳優がaという演技をする。
そうすると同じaの方法は取れないのでbという方法を生み出す。
通常なら、1キャストに1人なので、
共演者に影響は受けることはあっても
同じ役の俳優に刺激を受けることはない。

それは考えてみれば、厳しい現場と言える。
だからこそ、厳しさもありながら、
楽しい雰囲気の現場に作り上げるよう意識しているだろう。

そこでいろいろな掛け算が出来上がる。
共演者同士、
同じ役同士、
それに演出やスタッフも掛け算に加わり
無限のループが出来る。

ただし、これはどこかで妥協点を見出す必要もある。
肉体がなすことなので、
無限ではない。
それぞれの経験やポテンシャルもあるので、
出来た形で観客に提出しなければならない。

そこで、意欲や野心がある者は、
稽古を通し出来上がったものに
マシマシを加えてくるだろう。
全員マシマシだと、きっと収拾がつかなくなる。
それは全体のバランスを互いに理解し、
ちょうどいいところに落とし込む。
だいたいちょうどいい時間で終わる。

またそこに、照明や音響も加わり、
バカバカしいのか感動するのか
わけのわからない気持ちを抱く場面となる。

そういう相互作用が
A、B両方観ることにより、感じることが出来た。

5月に野外で行われたものから
半年経って観たので、
記憶が定かでない点も多いが、
忍者たちの合言葉
「なかよくしよう~」は
皆普通にそろっていたと思うが、
今回はあえてそれぞれが放つ不協和音がそろう、というのに
変わっていたように思う。

大蛇のチタオはこういう既製品が売ってるのかなあと
毎回考えていたけど、
電子パンフレット(紙パンフなしも一つの意思)をみたら、
『ちたお制作:めぐ』
とあった。

まぶしい!光り輝く武器、の前振りから
ライトセーバーが登場すると思わなかったが、
ビリー・ジョエルの「ストレンジャー」をバックに
スターウォーズ感にやたら忠実な効果音と
タイミングのよい音出しで、
ハットリ寛増が“自分自身”とミドリとアカのライトセーバーで戦う場面は
妙に優雅だった。

DXとはデラックスのほかデジタルトランスインフォメーションの意味があるようだ。
象徴と言えるQRコードは大小含め、何枚プリントアウトしたのだろうか?

クリエート浜松でMUNA-POCKET COFFEEHOUSE「忍者たち。DX」を観た



同じカテゴリー(演劇)の記事

 
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
クリエート浜松でMUNA-POCKET COFFEEHOUSE「忍者たち。DX」を観た
    コメント(0)