劇団からっかぜアトリエで劇団からっかぜ「ここだけの話」を観た

カテゴリー │演劇

4月19日(日)11時~

「ここだけの話」は劇団ショーマの高橋いさをさんの脚本。
劇団ショーマは、1982年に高橋さんが日大芸術学部演劇学科在籍中に結成され、
2019年2月5日公式ホームページの閉鎖と共に解散としている。(Wikipediaより)

上演時間1時間未満の一幕喜劇。

ベルボウイに案内されてホテルの一室にやって来た
男の部屋に花嫁姿の女が突然入ってくる。
登場人物はこの3人。

ベルボウイは男と女の関係を意図的には脅かさない。
男を恐喝したり、女に色目を使うこともない。
ベルボウイとしての仕事をまっとうする役。
ただし、その普段の仕事をまっとうすることが、
演劇に影響を与える。

プログラムによると、演じていたのは中学生の役者。
中学生のベルボウイは現実にもいないだろうから、
この役へのチャレンジ自身が、職業訓練にもなるという役者というものの面白さ。

ホテルにやって来た男は、ベルボウイが去り、ひとりになった時、
無言で間をたっぷり取った演技をする。
その意味はその時はわからない。
役者や稽古に付き合った関係者や脚本を知っている人にはわかる。

その意味は一体なんだろう?と考えていると、
突然ドアが開き、ウエディングドレスを着た女が飛び込んでくる。

ウエディングドレスにもさまざまなシルエットがあり、スカートの裾が短いものもある。
今回飛び込んでくる花嫁のドレスは尾っぽ(トレーン)が長い。
尾っぽが長いのは、中世ヨーロッパでは身分の高い人が着るものだったので、
エレガントさと引き換えの動きにくさは、むしろお抱えがたくさんいる裕福さを表している。

現代の結婚式もそういうものなのだ。
普段の生活はさておき、この時だけは、お金さえ出せば、
中世ヨーロッパの身分の高い人並みの扱いを受け、人生の一つのピークを演じる。

その特別な結婚式を前に、
心の中が逡巡し、式の手前で、しかも会場に来て、ドレスも着せられ、メイクもヘアも整えられ、
それでも逃げ出し、誰がいるかわからないドアが開いてしまった部屋へ飛び込む。

そんな非常事態から、演劇は始まる。
非常事態に尾っぽの長いウエディングドレスは似合わない。
逃げたり、隠れたりする状況に追い込まれる。

ドレスの長い裾を引きずらせて動く様子を見ながら僕が思った言葉は、
「白いゴジラ」。
ゴジラが、最大の武器となる尾っぽを引きずって暴れる様子と重なった。
劇中、役者は持て余す尾っぽの位置を整える動作をしたが、
イライラしている心のままに衣装を取り扱ってもよかった。

女が飛び込んできた理由が明かされ、
男が一層混乱し、この部屋に来た理由が語られ、
物語はエンディングに向け、収束していく。

エンディングの意味は、コロナ対策で人数制限を行った客席にも表れている。
西洋式の結婚式では欠かせないウエディングブーケが着席不可の客席を飾る。
この意味を考えてみれば、あらかじめ結末も想像できたかもしれない。

パンフレットに、事前に観光ホテルでスイートルームやバックヤードなど見学に行ったことが書かれていた。
舞台美術にも表れていたようで、出ハケを便利に何でも袖に頼らない作り込みは
役者にも観客にも優しい。

劇団からっかぜアトリエで劇団からっかぜ「ここだけの話」を観た



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