なゆた浜北でFOX WORKS×劇団「Z・A」合同公演「幻碌三文オペラ」を観た

カテゴリー │演劇

9月28日(土)14時~
この日はラグビーワールドカップ日本×アイルランド戦がエコパスタジアムであった。
僕が14時~の回を選んだのはラグビーのテレビ中継を観ることを想定してのことだったが、
どんな催しも観客の都合により影響を受ける。

仕事だったり、危急の用があれば仕方なかったりするが、
(とは言え、本当に行きたいものは仕事を犠牲にしてでも行く人もいる)
敵は、音楽ライブだったり、旅行、例えば東京ディズニーランドだったりする。

誰しも自分の関わるものを優先して欲しいと思う。
演劇のライバルがスポーツ、という訳ではないが、
興行と考えると同じ土俵上にあるともいえる。

浜松駅のそばでも
日本×アイルランド戦の関連イベントが開かれ
パブリックビューイングが実施された。
なゆた浜北方面へ向かう途中、
炭焼きレストランさわやかでは、
日本代表の赤と白のレプリカジャージを着た人が
順番待ちをしていた。
昼飯を食べた後、エコパへ向かうのだろうか?
もっと会場に近いさわやかあるのに。
でも混むだろうからあえて離れている店に来たのか?
県外の人よ。静岡県西部をじゅうぶん満喫しておくれ!
そんなことも夢想した。

浜松市を中心に活動しているFOX WORKSと
藤枝市を中心に活動している劇団「Z・A」による合同公演。
7月にはSPAC県民月間として
舞台芸術公園 野外劇場「有度」でも上演された。

ドイツ人の劇作家ブレヒトの「三文オペラ」を下敷きにしている。
先日観た「人形の家 PART2」はイプセン作「人形の家」の後日譚だが、
こちらは、設定を日本のとある時代に置き換えている。
どの時代かは触れられていなかったように思うが、
タイトルにある幻碌は江戸時代の政権が安定し、
“浮世の花”とさまざまな文化が花開いた元禄時代を想起させる。
話の流れは、何となく踏襲されているように思う。
(すみません。僕も不勉強で明確には検証できてません)

「三文オペラ」もブレヒト自身の完全なオリジナルではない。
ジョン・ゲイと言う作家の「乞食オペラ」を改作したものである。
ブレヒトは音楽家クルト・ワイルと組んで、
戯曲と音楽の新しい融合を試みている。
感情移入を助長させる戯曲のためのサービスとしての音楽ではなく、
音楽が、戯曲を解釈しながら、戯曲を前提とし、
述べられたことに対し、自らの態度を明らかにしながら、
仲介者の役割をする。
ブレヒトは求める音楽の役割をこのように述べている。

合同公演である場合、
1+1が、単純に2ではなくて、
プラスアルファーを期待する。
化学反応、ケミストリー。
ブレヒトも戯曲+音楽が単純に合わさるのみでなく、
そのことによって波及する更なる効果を期待したはずだ。
それは言わずもがな観客に向いている。
そして当然観客の先には、世間や社会がいる。

「幻碌 三文オペラ」は元禄時代を想起させるとはいえ、
そこにこだわる必要はないのかもしれない。
浮かれた華やかで混とんとした時代、
そんな架空の時代設定で書かれていると考えた方がいいのだろう。

僕は観ながら、
これは歌舞伎だなあと思った。
決して対話劇ではない。
役者は主に正面を向き、
短いセリフ、長いセリフを語り、
時には見えを切り万来の客の喝さいを浴びる。
人気劇団である劇団新感線の芝居を演出者の名をとって
いのうえ歌舞伎とも呼ばれる。

しかしながら
それを実現するには物量がいる。
プロセニアムの劇場の額縁をいろいろなもので埋めなければならない。
不条理劇や対話劇なら
簡素で何もない空間がかえって効果的だったりする。
ところが歌舞伎はそうはいかない。
そこで書割と言う便利な舞台美術が出来た。
1枚の絵で空間を埋めてしまうのだ。
それで特別な世界に入り込ませる。
役者も含め舞台全体が絵巻物になる。

合同公演を企画した時、
それを夢想したのではないか。
1+1が2じゃなくて、
化学反応を起こして無限大に広がる。

とは言え、演劇とは非情なほど
現実的だ。
やったこと、できたことしか結果に反映しない。
ギャップを埋めることが
本番までの準備期間で行うことだが、
当然ながらできなかったこと、
やり残したことは残る。
だから終わった後、
満足感の中に
一抹の敗北感も同居する。

静岡での野外劇は拝見していないが、
もしかしたら、野外の空間が借景の役割を持ち、
空間を埋めていたのかもしれない。
そこに華やかな衣装が照明に映え、
役者は自然の風をも味方にして演じる。

音楽は、やはり、ストーリーに関わっている
メインの役者たちにも歌ってもらいたかったかなあ。
そのことにより、戯曲と音楽の
対等な融合が出来る兆しになるはずなので。

合同公演の一番の障害は距離だと思う。
浜松と藤枝の距離。
近いという人も遠いという人もいるだろうが。
モチベーションはそれぞれ100%だと思う。
だからタッグが実現する。

このような“荒事”の芝居を試みる劇団はとても貴重だ。
できることから計算するのは
一方つまらないとも言える。
歌舞伎や劇団新感線の豊富な物量は
かける金銭ゆえの部分も大きい。
その方法とは違う手段もあるはずだ。
きっと。

なゆた浜北でFOX WORKS×劇団「Z・A」合同公演「幻碌三文オペラ」を観た


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