『雄踏歌舞伎』を観ることが出来なかった

カテゴリー │演劇

1月21日(日)

『雄踏歌舞伎』を観るために、会場である雄踏文化センターまで行ったが、
駐車場が満杯で、待てば空きが出ただろうが、
まだまだお客さんがやって来そうな雰囲気に、急遽行先を変えることにした。

飲食店でも行列を見ると、入るのをやめたり、
映画を観に行って、混雑していると観ずに帰ってしまうことがある。
自覚している僕の習性だが、
どこか、こんなに観る人がいるのなら、
僕ひとりが客席にいなくてもいいじゃないか、
という変な、驕ったような気持ちがあったのだと思う。

きっと会場には、地域や近辺、または遠方から、
この日を楽しみにやって来た人たちがいる。
普段演劇をあまり目にしない人もいるだろう。
出演者の身内や子供歌舞伎だったら、親やおじいちゃんやおばあちゃんもそろって来ているだろう。

昼飯時を挟むから、お弁当も持参で詰めかけているかもしれない。
公共ホールは飲食禁止の所が多いが、
少なくとも銀座の歌舞伎座は飲食自由だ。
雄踏文化センターがどうかは知らないが、
客席では禁止でも、ロビーではお弁当を広げる輪が広がっていることだろう。

『雄踏歌舞伎』は新聞で読んだ開催時間は10時30分から14時30分の4時間。
江戸時代の歌舞伎は1日かけて1本を上演していたと言う。
物語の発端から終幕まで通して上演する「通し狂言」。
まさに庶民の楽しみだと思う。

現在の歌舞伎は興行的な理由から昼の部と夜の部と別れている。
でも大相撲なんかは朝9時くらいから前相撲が始まり、幕内の結びの一番が終わるのは18時近く。
実に9時間の催しだ。

以前、引佐の横尾歌舞伎に行ったことがあるが、
全国各地で専業俳優意外の役者により演じられる素人歌舞伎が行われている。
農村歌舞伎、村芝居などと言う場合もあるだろう。
有名な時代物の歌舞伎を演じるのが一般的。
(素人歌舞伎という言葉が、素人演劇、素人音楽、素人ダンス、素人絵画などと言わない中、どうかと思うが、Wikipediaより引いた)

「大鹿村騒動記」という原田芳雄さん主演の映画では、
長野県下伊那郡大鹿村で300年にわたり行われている素人歌舞伎、大鹿歌舞伎を題材にしている。

お祭りで舞いを踊ったり、お囃子を演奏するなど、
演劇的なことは文化・伝統の継承や住民の娯楽・楽しみとして、
全国のどこででも行われている。

決して特別なものではない。
でも、やはり特別なもの。
演劇とはそういうものであるといいと思う。

『雄踏歌舞伎』もぜひ観たかった。
路上演劇祭で知り合った仲間が雄踏歌舞伎を手伝っている話を聞き、
今回行こうと思った。
それを果たせなかったのは申し訳ない。

でも、満杯の駐車場を見て、
地域に十分支持されていることを理解できただけでも、
良かったと思う。

何かを観ようとした時、
情報で知り得ないことは想像してみる。

時間と体は有限なので、
他の用と重なることもあるし、
当然気持ち的な問題もあったりし、
行くか行かないかの選択をすることになる。

もちろんいくら想像してみても、
実際に観て見なければわからない。
横尾歌舞伎では子供たちによる「白波五人男」が演じられた。
それは当然ながら無条件で拍手喝采ものだ。

素人歌舞伎をやっている人たちは、例えば歌舞伎座や南座で行われる歌舞伎を超えたいと考えることはあるのだろうか?
先進的な演出、歌舞伎役者を超えるような演技や舞、衣装や演奏‥‥‥。
おそらく、そのような世界で成り立っているものではないと思う。

自分だけのためのものではない。
何者かに突き動かされやっている。
それは神かもしれないし、宇宙や大地のようなものかもしれない。
文化の根源的なもの。

急遽変えた行先は、袋井市内の旧浅羽町。
地域に住む人の話を元にした朗読劇。
当日の入場可のSNS情報を目にしていたのも行くことを決めた理由。
浜松の西側にある雄踏から自宅あたりを通り越し、
天竜川を越え、東へ向かう。


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