静岡県舞台芸術公園稽古場棟「BOXシアター」で劇リンピック2022を観た

カテゴリー │演劇

2月27日(日)11時15分~

劇リンピックとはなかなか強気なイベント名だ。

命名の元であろうオリンピックは夏の東京、そして冬の北京は終わったばかりで記憶に新しい。
オリンピックが、順位を競うことに対し、劇リンピックは並列に上演される。

予算が膨らみ、商業主義な点も際立つ近代オリンピックの意義も問われるが、
オリンピック憲章の第1章にはこうある。
「オリンピズムとその諸価値に従いスポーツを実践することを通じて教育し、平和でよりよい世界の建設に貢献することである」

これをスポーツ→演劇に書き換えるとこうなる。
「劇リンピックとその諸価値に従い演劇を実践することを通じて教育し、平和でよりよい世界の建設に貢献することである」

互いを比較しない“劇リンピック”は本来のオリンピックの意義を踏襲しているのかもしれない。

と言っても、作品上演後のインタビューや4作品を観た後、各代表が登壇してのトークセッションを聴きながら、
順番は付けられないが、互いに刺激しあい、ある意味、競っている部分もあるだろうと思った。

まわりの勢いを見て、動きを変えた、という言葉もあった。
リハーサルを経て、26日の初日の本番を経て、僕は2日目の1回目の上演を観る。
その後15時15分からの2回目はまた変わったかもしれない。

上演順に
①unit.F 「記者会見は突然に」
②猫熊 with ねこなべ 「クジラの歌」
③演劇ユニットFOX WORKS 「トライオキシン245」
④イチ二ノ 「胴の長い猫」

オリンピックは、同じスポーツでも種目分けや階級分けがあり競うのであるが、
劇リンピックは、異種格闘技である。
普段はきっと戦うことはないと思う。

unitFは一人芝居。
製菓会社で硬いせんべいで歯が欠けたということが理由で訴えられ、
謝罪会見にのぞむ第5工場・工場長の女性を演じる。

演出名もパンフレットに記載されている。
一人芝居をやろうという試みはどこから生まれてきたのだろう?
演出がつくのとつかないのとで、ずいぶん違いがあると思う。
他者と作るからこそ、自由に動ける場合もあれば、
一人で作るからこそ、そうできる場合もあるだろう。

謝罪会見に臨む理由がばかばかしく、
キレていく主人公が楽しい。
真正面に取り組む姿勢に好感。

猫熊 with ねこなべは二人芝居。
熊猫はパンダのことだが、逆さにして、猫熊。
フリガナによると、DANPAと読むのか?

マッチングアプリにより出会った二人の間に起きる顛末。
終了後は観客に拍手をするべきかせざるべきか迷わせるという初めての体験。
僕は良心に従って、しなかったが、
その後は、MCのフォローで安心して拍手をする。

劇団名と言い、話の展開と言い、トリッキーさ満載で、
それは劇団の指向でもあるのだろう。
経験を積むと話との連動性も出てくると思う。

演劇ユニットFOX WORKSは娘が、押し入れに閉じこもった父親を外に引き出そうという話。
コロナ禍を想起した設定に、真面目な展開もありだと思ったが、
出てくる登場人物はキャラクター性を前面に出し、不条理に広がっていく。

キャラクター性というものはなかなか取り扱いが難しく、
演劇より、漫画やアニメでは、欠かすことのできない事項だが、
これはクリエーターの頭と技術を使っての作業で何とかなる。
対して、映画やテレビなどの実写動画、または演劇では、
人間が生身で演じなければならない。
実写化があだになるメジャー作品を僕たちはたくさん見ている。

物語の先にキャラクターがあると言いたがりがちだが、
キャラクターの先に物語があってもいいと思う。
世には2.5次元ミュージカル・演劇というジャンルもある。
舞台における生身の人間の範疇も変わってくるかもしれない。

イチニノは茨城県から参加の劇団。
男性教師と女子高校生の間のきわどい関係性がずっと舞台を支配していて、楽しい。
三者面談が親を排除した二者面談になるところなど導入設定が巧妙。

タイトルの「胴の長い猫」の命名理由をMCに問われた俳優兼作者は、答えを濁したが、それはどこか作家自身が隠したい部分(作品の制作理由)でもあり、作品観ればわかるだろ、という自負を感じた。

最後は男と女の関係を越え、青春ドラマのように旅立つのはひとつの理性。
全体を彩るのは「高速マイム」。
フォークソングの「マイムマイム」を高速で踊るのだが、
調べてみたら、実際に伊豆諸島・八丈島の盆踊りなどで踊られているようだ。
なるほど、女子高校生は、八丈島に転校するという設定になっている。

そういえば、パラリンピックも始まった。
社会的な混乱も携えて。
もちろん選手たちは競技をまっとうする。

静岡県舞台芸術公園稽古場棟「BOXシアター」で劇リンピック2022を観た



同じカテゴリー(演劇)の記事

 
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
静岡県舞台芸術公園稽古場棟「BOXシアター」で劇リンピック2022を観た
    コメント(0)