2015年02月17日22:36
鬼と私の居ぬ間に その4≫
カテゴリー │ブログで演劇
帽子をかぶった男がやってくる。
男「おかしいなあ。どこ行ったんだろう?(上を見て)空から飛んできて、(頭さわり)あの電線に当たったんだよな。物質には目ってもんがあって、その目をタイミングよく切り裂くと、切れないはずの固いものもすぱっと切れてしまう。そんな感じだったんだろうな。まさか電線でなあ。あ、カラス」
カラスの鳴き声、カーと一声。
男「くそっ。馬鹿にしてんのか。(カラスに)わ~」
カラス、カー、カー鳴きながら飛び去っていく。
男「ここで折れたのは間違いない。あ、カラスの奴持ってったのか?カラスめ~俺の折れた角かえせ~」
男、カラスが去った方向を見ている。
男「こんなんじゃなあ。俺が鬼だと言っても誰も信じちゃくれない。何より、鬼としての力が、そうだな。1%、いや、0だな。まったく出やしねえ」
男は鬼だった。
鬼「(自らを見て)ただの気のいいおっさんじゃねえか。だからカラスにもなめられるんだ。雰囲気だけでも鬼のように」
鬼、自らを鼓舞し、鬼のように怖そうにふるまおうとする。
鬼「駄目だ。負のオーラがまったく出ない。どこだ~。俺の角~。鬼の角返せ~」
鬼、去っていく。
桃子がやってくる。
桃子「おかしいなあ。確かに鬼波はこのあたりだけど、あまりに弱すぎる。警戒して、どこかに潜んでいるのか。不気味だ。だからこそ、フルパワーになった時が怖い」
桃子、去っていく。
浦島と小夜子が買い物袋を提げてやってくる。
浦島は似合わない派手なセーター着ている。胸に大きなくまさんのアップリケとか。
浦島「小夜子さん、どうしてもこのセーター私には若すぎると思うんだけど」
小夜子「そんなことありませんよ~。ぴったりですよ。私、お母様にはいつまでも元気でいらして頂きたいから」
浦島「(うれしいはうれしいが複雑)そうねえ」
小夜子「今夜は私の得意な山芋料理をつくりますよ。山芋を丁寧にすりおろして」
浦島「ごめん。すり鉢はあるんだけど、すりこぎ折れちゃって」
小夜子「花咲商店にすりこぎありましたよ。よさそうだったんで、予約しときました」
浦島「ありがとう」
宇佐山と亀村がそろってやってくる。
浦島「あ」
宇佐山・亀村「(やばいという感じ)あ」
浦島「さあ、歌の練習しますよ」
宇佐山「もういいじゃない」
亀村「うぷ。(笑いこらえられない)浦島さんそのセーター」
宇佐山「あは。かっこわる~い」
ふたり、笑いだす。
浦島「え?おかしい?ねえ。小夜子さん、このセーターおかしい?」
小夜子「そんなことありませんよ。お母様。(ふたりに)謝ってください。私のお母様に謝ってください!」
宇佐山・亀村「だって~」
ふたり、笑い転げている。
桃子がやってくる。
桃子「(携帯持って)鬼波が少しずつ強くなっている。みなさん。安全な場所に避難してください」
宇佐山「(笑いながら)ひなん~?」
桃子「事態がつかめないと思いますが、国からの強制的な避難命令です」
亀村「(笑いながら)何言ってんの~、この娘?」
宇佐山「おかしな人ばっかり」
亀村「ねえ」
百合、雪、夕子がそろってやってくる。
百合「桃子さん何やってるのよ。鬼のあなたが追いかけなくちゃ、鬼ごっこにならないよ」
桃子「私は鬼なんかじゃない。鬼がこの近くにいるのよ!」
しーんとしている。
夕子「よくわからないけど、駄目よあなた、ルール守らなきゃ」
雪「あなた、じゃんけん負けたでしょ?私たちパーだして、あなただけがグーで負けた。だからあなたが鬼なの」
桃子「私の名前は吉備野桃子。桃太郎の末裔です」
百合「ももたろう?昔話の?桃から生まれた?」
桃子「桃から生まれたのは初代桃太郎だけです。結婚して・・・」
百合「桃太郎って結婚したんだ」
桃子「以来、男の子なら桃太郎。女の子なら桃子と名付けられ、代々、鬼退治をしてきました」
全員「鬼退治~」
桃子「大和の時代から江戸、明治、大正、昭和、そして平成の今でも世の中の悪いことはすべて鬼の仕業といっても過言ではありません。戦争や飢餓、兄弟げんかも」
雪「兄弟げんか?おやつの取り合いも?」
桃子「そうです」
浦島以外「へえ~」
桃子「私は第28代の桃子です。過去には個人で鬼退治していた時代もありますが、私は国の組織に属して活動しています」
百合「国家戦略室別室・・・」
桃子「はい。正式名称、鬼対策特命1課」
小夜子「近くに鬼がいるんですか?」
桃子「はい」
みんな固唾を飲む。
浦島「(手をぽんぽん叩き)お遊びの時間は終わりだよ。(桃子に)あなたね、人をだますのは止めなさい。狼少女になっちゃうよ」
百合「そうだね。そんな話あるわけない」
みんな、そうね、そうね。
桃子「あ、鬼波が急に上がった!」
その5に続く
男「おかしいなあ。どこ行ったんだろう?(上を見て)空から飛んできて、(頭さわり)あの電線に当たったんだよな。物質には目ってもんがあって、その目をタイミングよく切り裂くと、切れないはずの固いものもすぱっと切れてしまう。そんな感じだったんだろうな。まさか電線でなあ。あ、カラス」
カラスの鳴き声、カーと一声。
男「くそっ。馬鹿にしてんのか。(カラスに)わ~」
カラス、カー、カー鳴きながら飛び去っていく。
男「ここで折れたのは間違いない。あ、カラスの奴持ってったのか?カラスめ~俺の折れた角かえせ~」
男、カラスが去った方向を見ている。
男「こんなんじゃなあ。俺が鬼だと言っても誰も信じちゃくれない。何より、鬼としての力が、そうだな。1%、いや、0だな。まったく出やしねえ」
男は鬼だった。
鬼「(自らを見て)ただの気のいいおっさんじゃねえか。だからカラスにもなめられるんだ。雰囲気だけでも鬼のように」
鬼、自らを鼓舞し、鬼のように怖そうにふるまおうとする。
鬼「駄目だ。負のオーラがまったく出ない。どこだ~。俺の角~。鬼の角返せ~」
鬼、去っていく。
桃子がやってくる。
桃子「おかしいなあ。確かに鬼波はこのあたりだけど、あまりに弱すぎる。警戒して、どこかに潜んでいるのか。不気味だ。だからこそ、フルパワーになった時が怖い」
桃子、去っていく。
浦島と小夜子が買い物袋を提げてやってくる。
浦島は似合わない派手なセーター着ている。胸に大きなくまさんのアップリケとか。
浦島「小夜子さん、どうしてもこのセーター私には若すぎると思うんだけど」
小夜子「そんなことありませんよ~。ぴったりですよ。私、お母様にはいつまでも元気でいらして頂きたいから」
浦島「(うれしいはうれしいが複雑)そうねえ」
小夜子「今夜は私の得意な山芋料理をつくりますよ。山芋を丁寧にすりおろして」
浦島「ごめん。すり鉢はあるんだけど、すりこぎ折れちゃって」
小夜子「花咲商店にすりこぎありましたよ。よさそうだったんで、予約しときました」
浦島「ありがとう」
宇佐山と亀村がそろってやってくる。
浦島「あ」
宇佐山・亀村「(やばいという感じ)あ」
浦島「さあ、歌の練習しますよ」
宇佐山「もういいじゃない」
亀村「うぷ。(笑いこらえられない)浦島さんそのセーター」
宇佐山「あは。かっこわる~い」
ふたり、笑いだす。
浦島「え?おかしい?ねえ。小夜子さん、このセーターおかしい?」
小夜子「そんなことありませんよ。お母様。(ふたりに)謝ってください。私のお母様に謝ってください!」
宇佐山・亀村「だって~」
ふたり、笑い転げている。
桃子がやってくる。
桃子「(携帯持って)鬼波が少しずつ強くなっている。みなさん。安全な場所に避難してください」
宇佐山「(笑いながら)ひなん~?」
桃子「事態がつかめないと思いますが、国からの強制的な避難命令です」
亀村「(笑いながら)何言ってんの~、この娘?」
宇佐山「おかしな人ばっかり」
亀村「ねえ」
百合、雪、夕子がそろってやってくる。
百合「桃子さん何やってるのよ。鬼のあなたが追いかけなくちゃ、鬼ごっこにならないよ」
桃子「私は鬼なんかじゃない。鬼がこの近くにいるのよ!」
しーんとしている。
夕子「よくわからないけど、駄目よあなた、ルール守らなきゃ」
雪「あなた、じゃんけん負けたでしょ?私たちパーだして、あなただけがグーで負けた。だからあなたが鬼なの」
桃子「私の名前は吉備野桃子。桃太郎の末裔です」
百合「ももたろう?昔話の?桃から生まれた?」
桃子「桃から生まれたのは初代桃太郎だけです。結婚して・・・」
百合「桃太郎って結婚したんだ」
桃子「以来、男の子なら桃太郎。女の子なら桃子と名付けられ、代々、鬼退治をしてきました」
全員「鬼退治~」
桃子「大和の時代から江戸、明治、大正、昭和、そして平成の今でも世の中の悪いことはすべて鬼の仕業といっても過言ではありません。戦争や飢餓、兄弟げんかも」
雪「兄弟げんか?おやつの取り合いも?」
桃子「そうです」
浦島以外「へえ~」
桃子「私は第28代の桃子です。過去には個人で鬼退治していた時代もありますが、私は国の組織に属して活動しています」
百合「国家戦略室別室・・・」
桃子「はい。正式名称、鬼対策特命1課」
小夜子「近くに鬼がいるんですか?」
桃子「はい」
みんな固唾を飲む。
浦島「(手をぽんぽん叩き)お遊びの時間は終わりだよ。(桃子に)あなたね、人をだますのは止めなさい。狼少女になっちゃうよ」
百合「そうだね。そんな話あるわけない」
みんな、そうね、そうね。
桃子「あ、鬼波が急に上がった!」
その5に続く