シネマe~raで「ある精肉店のはなし」を観た

カテゴリー │映画

22日(土)12時25分~
上映後、監督である纐纈(はなぶさ)あや氏があいさつ。
大阪にある、牛の飼育、そして、屠殺から解体、精肉、販売まで、一貫して行うという
精肉店のおよそ1年の模様を丹念に追ったドキュメンタリー映画。
過去、彼ら家族の親が精肉店を営むようになった背景にも触れられるが、
それらに対する意見はまったくはさまない。
牛舎から朝の住宅街を牛を引き連れていく場面から映画は始まる。
行き先は屠畜場である。
死に向かう牛が少々どうもうで、引き連れる人を手こずらせるのは
死にいく運命をおそれるせめてもの抵抗か・・・
というのは人間の勝手な想像力だが、
引きつれる人はそんな感傷に浸っている暇はない。
スタッフである家族たちが待つ屠畜場に向かわなければならないのだから。
所定の場所に到着すれば、今まで何度も行ってきた
いわゆるいつもの仕事がはじまる。

精肉店をはじめた先代である父親の長男、次男、長女、長男の嫁が
牛の屠殺、解体、精肉まで、流れるように行う。
そして一仕事終えた昼食は、長女がその場で揚げたてんぷら
を次々に食す。
これがうまそうだった。

ある時は子どもたちも交えて、焼き肉を食べる。
煙がもうもうになりながら。
よく語らいながら。
よく笑いながら。

先代が精肉店をはじめたのは決して明るいものではない。
未来への夢、などというものではない。
小学生の時、差別的言葉をかけられたのをきっかけに
学校へいかなくなり、おかげで、言葉がわからないながらも、
当時の人がやりたがらなかったこの生業を始め、
でも、以後、誇りを持ってこの仕事を営み、
長女の口から語られる今は亡き父親の描写が魅力的である。

いいものを身につける必要はない。
ボロで十分。
ただ、洗濯はしっかりしろ、
金さえもっていたらなめられない。
そして、いつも頭に鉢巻きをし、
ボロではあるが、よく洗濯された服を着こなしていた。

そんな姿を長女は恥ずかしかったというが、
笑いながら語る様子は、父のことが好きでたまらないことが伝わってきた。


シネマe~raで「ある精肉店のはなし」を観た


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この記事へのコメント
精一杯生きてきた(生きている)家族の素晴らしさが、文章から伝わってきました♪
Posted by 猪ボヘミアン at 2014年03月25日 20:47
屠畜という仕事にかねてから関心を抱いていたというこの女性監督は
この映画の舞台となる精肉店で行われた屠畜の見学会に訪れます。
屠畜現場をテーマに写真を撮る写真家に誘われたのがきっかけだったそうです。
そこがこの映画の舞台となった北出精肉店です。
撮影許可をとられるのに半年くらい時間がかかったようです。
でも、了承されて、出演者となった北出家の人たちのスクリーン上のふるまいは見事なものです。
Posted by テトラテトラ at 2014年03月30日 19:59
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