ニューウェルサンピア沼津に泊って思ったこと       

カテゴリー │静岡県西部演劇連絡会会報原稿

■ニューウェルサンピア沼津に泊って思ったこと       
                                             フィールド  寺田景一


つい最近、仕事で東部地域に2日通して行く機会があり、沼津にあるニューウェルサンピア沼津という施設に宿泊した。
滞在先が不確定だったので、当日、出先からネットの宿泊サイトで予約した。
探すキーワードは価格が安いということ。街中からは多少離れているが、車なので、広い無料駐車場はありがたい。
風呂は温泉。そんな理由で決めた。

ここはかつて、社会保険庁が厚生年金加入者の健康増進を目的として、全国各地にグリーンピアとかサンピアとかウェルサンピアとかの名称でつくられた各施設のひとつ。
それら施設のほとんどが大きな赤字だったため、すべての施設を売却、廃止されることとなり、民間や、自治体に権利は移り、さまざまな形に変わっている(例えば大江戸温泉物語とか)。
僕が泊ったニューウェルサンピア沼津もウェルサンピア沼津からニューがつき、民間会社により経営されている。

ただし、建設時、巨額の金が投入されただけあり、広々とした敷地に、宿泊施設、会議室、温泉、レストラン、テニスコート、プールなど充実した設備はそのまま利用されている。
愛鷹山のふもと小高い場所にあり、チェックアウト後、ながめたら、駿河湾とともに伊豆半島が一望できた。金をかけるってすごいなあ、と思った。

部屋に布団を敷きに来た従業員の方に、「ご年配の方が多いですね」と施設内で感じたまま伝えたら、「いろんな方がいらっしゃいます。今までは学生さん、これからは会社関係が多いですよ」という返答。
今までは大学のゼミやサークルの合宿、これからは新入社員の研修に使われるのだなと、すぐに理解した。

合宿といえば、僕がかつて在籍した劇団では、よく合宿を行った。
僕が入団したのはゴールデンウイークの少し前だったが、直後のゴールデンウイーク中の3日間、春野で合宿が行われるということだった。
いきなり合宿というのもなあ、と思ったが、演劇をやるつもりで入ったのだし、参加しない理由もなく、当然のように参加した。

合宿はいくつかの場所で行われたが、よく使用したのは、奥山半僧坊(方広寺)にある研修施設である。
ずいぶん過去の話であるが、大広間など畳敷きの部屋がたくさんあった記憶がある。
印象的なのは大広間。調べたら今も115畳の部屋があるようだ。

合宿の目的は、もちろん、演劇の稽古である。
座禅はしない。

僕は、この合宿がけっこう好きだった。僕は主に役者だったが、普段の稽古では、演出家のダメ出しに対し、修正して演技をするのだが、なかなかいい方向にもっていけないことが多かった。
やればやるほどダメになるってやつである。
平日の仕事終わりや、休みの日でも時間は限られているので、やってもやってもどうにもこうにもうまくいかないまま、時間切れということになる。

ところが合宿だと、時間があるので、いったんそのシーンはお預けにして、他の人のシーンに移り、時間を置いて、再度チャレンジということができる。
そして、最後に全体のおさらいで通したりする。
そうこうして、時間を使っている内に、何かがこなれてくる感じがする。
役が自分の中で一本、線が通ったというか。

それまで自分を勝手に縛っていた自意識が一挙に解き放たれた感じ。
今まで受けたダメ出しが、今、血となり肉となり、この場で再現された感じ。
役が自分のものになり、共演者や、脚本とも調和し、まさにその役が今を生きている感じ・・・となっていたかどうかはわからない。
長い時間同じような稽古をやった疲れもあるかもしれない。
判断基準も鈍っているのかもしれない。
寝食を共にし、同じ時間を過ごした慣れ合いもあるかもしれない。自分たちだけそう思っているのかもしれない。

でも、そう錯覚でもしてしまうような瞬間が、合宿では必ず訪れる。
よし、これでいつでも本番OKだ、と心強い気持ちで、合宿先を後にする。

といいながら、合宿後のいつもの稽古では、また同じようなダメ出しをくらい、変わってないなあ、と思ったりするのだが。
 
そういえば浜松にもサンピアがあり、何度か風呂に入りにいったなあ、と思い出し、少し調べたら、すでに閉鎖されていた。

 (4月6日号西部演劇連絡会会報より)

写真は朝、ニューウェルサンピア内で撮った。

ニューウェルサンピア沼津に泊って思ったこと       


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この記事へのコメント
奥山半僧坊での合宿は、私は記憶にありません。私は何度も劇団を辞めましたから、その間にそこで合宿をしたと後に伝えられたような微かな記憶があります。何度も合宿を行ったということですから、私が完全に劇団を去った後にも、方広寺の宿泊施設での合宿があったのだろうと思います。

思い出しましたが、亡くなったお父様絡みのことでテトラさんがスズキーナから酷い言い方をされたのは、もしかしたら奥山半僧坊での合宿の時だったのでしょうか?

テトラさんは役者気質を持っているのでしょうねぇ。
私は合宿で演技が良いものになった経験はありません。常に自意識が自分を守っていたのだと思います・・・なんともですねぇ。
Posted by 猪ボヘミアン at 2014年04月15日 00:31
父が死んだのは、劇団に入って半年くらいで、
合宿とは関係ないと思いますが、
しばらく休んでいたら、
「そろそろいいだろ」
と稽古にくるよう連絡があったのは覚えています。
Posted by テトラテトラ at 2014年04月19日 07:59
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